「貿易における環境保護条約について」!!
7分54秒の動画やで!!
どうもこんにちは。飯野です。
本日は貿易における、環境保護を目的とした国際ルールについてお話をしていきたいと思います。
国と国とをまたいで取引をするのが貿易です。各国の法律・ルールが異なる企業同士で取引をするにあたり、守らなければいけない環境保護に関する国際条約があります。
このような条約がないと、地球の生態系や環境破壊を気にせずに 利益追求だけを考える企業が現れてしまいますので、貿易において環境保護は外せないテーマなんです。
それでは、いってみましょう。
ワシントン条約
まずはワシントン条約です。
ワシントン条約は絶滅危惧種を保護するための国際条約で1975年に発行され、世界で約170国が加盟しています。この条約で保護されている身近な例を挙げますと、象牙のハンコや、ワニやヘビなどの革製品、鷹や虎の剥製などがあります。
商業目的のための過度な取引を防止し、種の絶滅の恐れがある生物をリストアップし、程度に応じて国際取引の規制をしています。
養殖されている経済動物であったとしても貿易取引には許可申請が必要です。CITESという書類を輸出国側で発行し、日本であれば経済産業省に事前に許可申請をして、許可が降りたら輸入が出来るようになります。
ワニ革をCITESで申請
私も以前にタイの地方にいる業者さんから、養殖のクロコダイルが増えすぎて困ってると相談を受けて、クロコダイルの革製品の取引をしていた時があります。
その時の書類申請は慣れてしまえば手間としては問題ありませんが、やはり役所が関係することなのでスケジュール通りにはいかない事が多かったです。
正規の方法を取らずに輸入する 競合の個人事業主も結構いましたので、高価なワニ革製品を税関で没収になるケースもあったかもしれません。
生物多様性上約
一緒に覚えておきたいのが生物多様性条約です。
ワシントン条約は絶滅危惧種の保護を目的とするものですが、生物多様性条約は1993年に発行され、世界で約194カ国・地域が締結し、生物の多様性の保全や、生物資源の持続可能な利用などを目的とするものです。
生物の多様性の保全に必要なのは、外来種の侵入防止が重要です。日本においては外来生物法で被害を及ぼす恐れがある生物を特定外来種に指定し、飼育や栽培、輸入などを規制しています。
外来種ブルーギルによる影響
日本において外来種で有名なのはブルーギルかなと思います。滋賀県の琵琶湖ではブルーギルが急増したことにより、モツゴという魚の 卵や稚魚・成魚が捕食され激減したというレポートもあります。
特定の地域の生物が 外来種によって絶滅の危機に晒される恐れもありますので、どんな生物であっても自由に国をまたいで取引や輸入されるものではりません。
バーゼル条約
そしてバーゼル条約です。
バーゼル条約とは有害廃棄物の国境を越える移動、及びその処分の規制に関する条約で、1992年に発行されました。
この条約が締結された背景としては、1980年代に欧米などの先進国からの廃棄物がアフリカの開発途上国に放置されて、環境汚染が生じるなどの問題がありました。
何の事前の連絡・協議なしに有害廃棄物の国境を越えた移動が行われ,最終的な責任の所在も不明確な状態でしたので、アフリカの国からしたらとんでもないことです。
有害物質の種類
有害物質の例として、水銀、鉛、ヒ素、ダイオキシンなどがあります。再生利用を目的としたスクラップの取引にはこれらの有害物質の含有に注意が必要です。
例えば、ブラウン管、使用済みのニッケル・カドミウム電池、電子部品スクラップ、金属含有のスラッジなど。これらを取り扱うには輸出入にも各関係局からの事前許可が必要です。
輸出側からの書類を入手し、運搬業者や処理業者のリストを含めた情報を日本だと経済産業省に申請をします。具体的な書類の内容は経済産業省のHPにも載っていますし、わかりやすい資料のリンクを貼っておきます。
マルポール条約
海洋汚染を防ぐための国際条約もあります。それがマルポール条約です。
この条約は船舶の運航や事故による海洋汚染を防止するための条約で1973年に採択され、油類はもとより、バラ積み有害液体物質、梱包して輸送する有害物質、汚水および廃棄物のすべてが規制の対象とされています。
LSSチャージ
この条約の中で、船舶燃料に含まれるSOx(硫黄酸化物)の濃度を抑制する規制が2020年に改定されました。これはPM2.5による大気汚染、人体の健康被害への対策です。
船舶燃料を低硫黄のものを使用することで、PM2.5を発生させないようにする為の決まりですが、その影響でローサルファーチャージが海運業界では発生するようになりました。
このローサルファーチャージについては別の動画で詳しく解説をしていますので、リンクを貼っておきます。
SOLAS条約
最後に海上人命安全条約のSOLAS条約です。
SOLAS条約とは、1912年のタイタニック号の海難事故を受けて制定された、船舶の安全確保を目的とする国際条約です。環境保護とは少しテーマが離れますが、貿易実務に関連する内容なのでご説明したいと思います。
貿易においての船舶の安全を確保するという意味で、コンテナの総重量を管理する必要があり 荷主はコンテナの総重量を正しく申告する義務があります。その総重量の確定方法がVGM(Verified Gross Mass)として2016年にSOLAS条約で制定されました。
沢山貨物をコンテナに積み込んだほうが荷主としては輸送効率が上がります。コンテナの積載可能重量は各国の道路交通法にも基づいて決まっていましたが、意図的にコンテナ重量を虚偽申告したり、また総重量を正しく測定する方法が分からず誤申告をしたりで、コンテナの荷崩れの事故が発生していました。
重たいコンテナを船の高い位置に置いてしまうと、バランスが悪くなり荷崩れが起こってしまいます。その為に VGMというルールが組み込まれ、現在ではカットオフ前に正しい総重量を申告することになっています。
先日更新したニュースの動画でも、SOLAS条約が改正される予定であるとお伝えしました。自動運航船を安全に運行する為のルール追加ということでしたが、このように時代が変わるにつれて条約は改定されていきます。
まとめ
それでは今回のお話をまとめましょう。
昨今では温室効果ガス削減をはじめとする環境対策が注目を浴びております。今回ご説明したように貿易にも環境に関する各種の国際条約の制限を受けるようになっています。
貿易で環境に関する条約は、ワシントン条約、一緒に覚えておきたい生物多様性条約、バーゼル条約、マルポール条約などがあります。また船舶の安全を確保するSOLAS条約についても今回はご説明しました。
貿易実務者としては、自社がこれから取り扱おうとしているものが、特定の条約・規制を侵害するものではないかをしっかりと確認しなければいけません。
規制は時代によって変わります。
特にこれからの時代は 環境に対する規制は更に強まっていくと思いますので、まず貿易には環境保護に関連する条約があることを知り、実務では各法規制や基準を守りながら商取引をしていかなければいけません。
これからもこのチャンネルで貿易について一緒に学んでいきましょう。今回のお話は以上になります!ありがとうございました!
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