貿易や物流の仕事を必ず出てくる書類があります。それは原産地証明書です。既に貿易に携わっている人であれば「関税を安くするための書類でしょ??」と理解されているかもしれません。
実際にはその用途としての機能が強いのですが、今回は原産地証明書の全体像からご説明をしていきます。
全体像は知らない人は結構 多いんだよ。
原産地証明書とは?
原産地証明書とはその名の通り、取引の対象となっている物品が特定の国又は地域で生産又は加工をされたことを証明する書類のことです。牛肉や水産品のトレーサビリティのために発行されたりもしますが、貿易では基本的に関税を低くするために取得されることが多いです。
英語では「Certificate of Origin」と表記されます。英文メールでは「Cert」や「C/O」と略して呼ばれることも多いので海外とメールでよくやり取りをされる方は覚えておくといいでしょう。
タイやとC/Oが多いな。
原産地証明が必要とされる場面
さて原産地証明書は輸出でも輸入でも必要とされる場合があります。輸出で必要とされる場合は大きく二つあります。
一般原産地証明書(非特恵)
まずは非特恵の原産地証明書です。これは契約上指定されていたり、輸入国側で輸入を禁じている国で作られた物品ではないことを確認するために必要だったりします。
詳しくはこちらの記事に書きました。
貨物を外国に輸送する時、貿易では原産地証明書を取得する場合があります。そして輸出で取得する原産地証明書は大きく分けて「一般原産地証明書」と、EPA経済連携協定に基づく「特定原産地証明書」の2種類があります。 どちらも「原 …
特定原産地証明書
もう一つが特定原産地証明書です。これは経済連携協定(EPA)に基づくもので、この協定を結んでいる国の輸入者は特定原産地証明書を用いることで特恵関税の適用を受けることができ一般税率よりも低い関税率で輸入ができるのです。
輸入者は協定で決められている規則を満たしていることを証明するためにこの原産地証明書が必要となり、輸出者側が発行手続きをして送ってあげる必要があります。
輸入で優遇される為に輸出者の協力が必要なんだ!
貿易での商取引で意識することの1つに関税があります。これにより製品の代金が関税により上がってしまい、輸入後に価格面での競争力がなくなってしまいます。 それを避けるために特定原産地証明書を使うのですが、これにより協定を結ん …
EPAとは?
ここでEPAという単語を初めて聞いたという方のために簡単にですがご説明したいと思います。EPA経済連携協定は、特定の国や地域同士での貿易や投資を促進するために輸出入に係る関税の撤廃・削減や投資環境の整備などを約束した条約です。
EPAとFTAの違い
よく似たものに「自由貿易協定(FTA)」もあります。こちらは名前の意味する通り、特定の国や地域同士での物品及びサービス貿易の自由化を定めたものです。
EPAはFTAの内容も含めつつ貿易だけではなくさらに人の移動やや知的財産、投資など様々な分野での協力を含む幅広い経済関係の連携強化を目的とする協定です。
EPAの方がより2カ国で連携を意識した協定やねん。
GSP – Generalized System of Preferences
輸入の場合では輸出と同じくEPAに基づく特恵関税制度に加えて、開発途上国・地域を原産地とする鉱工業産品および農水産品の輸入については、先進国による国際的途上国支援制度があります。
経済的に発展が遅れている、いわゆる発展途上国から輸入する貨物の関税を低くして日本へ輸出をすることで、発展途上国の経済力の上昇に貢献するというこの制度はもう何十年も前から取り組まれているのです。
この時の原産地証明書を使うのですがこの原産地証明書の名称は「Form A」です。
日本は先進国だから、Form Aは日本からは発行されないよ!
原産地証明書の種類
EPA – 日本と経済連携協定を結んでいる国々
シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、アセアン、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル。
そしてEPAに基づく特定原産地証明書の書式名は、連携している国同士の頭文字を取って名付けられています。
・Japan – Thailand: 「JTEPA」
・Vietnam – Japan: 「Form VJ」
例えば、日本とタイであればJTEPA(JAPANとTHAILANDのEPA)、日本とベトナムであればフォームVJ(VIETNAMとJAPAN)などです。これはわかりやすくてよいですね。
FTA – ASEANの自由貿易協定
そしてASEANで締結されている自由協定には色んな種類があり、それぞれの経済協定で使う原産地証明のフォームの名前も違います。
ASEAN諸国との取引をする時はどの貿易協定が使えるのかを事前に確認しておきましょう。
GSP – 日本と後発開発途上国
日本と特別特恵受益国として指定する受益国(47カ国)を原産地とする産品については、品目により無税になる関税の優遇措置があります。
この後発開発途上国から発行される原産地証明書は「Form A」です。
原産地証明の種類のまとめ
色んな原産地証明書の種類と名前が出てきましたので、少し整理をしましょう。
1. 一般原産地証明
2. 特定原産地証明
・ EPA – 経済連携協定: JTEPA・VJ Formなど
・ FTA – 自由貿易協定: Form AK・Form Dなど
・ GSP – 一般特恵原産地証明: Form A
原産地証明書は2種類しかありません。「一般原産地証明」と「特定原産地証明」です。
一般原産地証明は原産地を証明するだけのものなので非特恵(関税の優遇なし)です。
一方で、特定原産地証明にはEPA、FTA、GSPがあります。それらは各国の経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)、そして発展途上国に対しての経済的な特恵(GSP)があります。
全て関税に対する特恵(無税・減税)があります。
慣れないと分かりにくいよね。。
原産地の規則
さてここで日本とタイとの経済連携協定を使って輸出入をするとします。これは日本とタイとで結ばれた協定ですのでどちらかの国で生産されてさえいれば全て関税の削減又は撤廃が認めると考えがちですが実はそうでもないのです。
EPAの原産地規則で決められている条件をクリアしなければなりません。
詳細に説明するとかなり長くなってしまいますので簡単に説明しますと原産地の基準として3つの条件が定められています。
①日本(タイ)で完全に生産された産品であること(WO)
②日本(タイ)の原産材料のみを使用して日本(タイ)で生産された産品であること(PE)
③外国の原材料を実質的な変更をして日本(タイ)で生産された産品であること(PS)
このように、かなり細かい条件となっております。輸出入が決まりEPAを使って関税を低くしようと考えた場合にはこの条件をクリアしているかをしっかりと吟味しなくてはなりません。
どこで原産地証明書を取得するのか?
その原産地証明書はどこで入手するのかと言いますと各地にある商工会議所で発行してもらえます。
輸入の場合は輸出国の行政機関が発行することとなります。当然ですが日本では発行することはできません。輸入が決まり次第、輸出者に原産地証明書を取得するよう依頼しましょう。
タイではDepartment of Foreign Trade(DFT)で取得するんだ。
原産地証明書に関する注意点
原産地証明書は輸入通関の際に原本が必要となります。コピーではまず受け付けていただけません。航空機での輸入や海上輸送でも中国や韓国など船足の短い国の場合には、なるべく早く原本が手元に届くように輸出者側としっかり調整をして下さい。
そうでないと、原本を待つ時間がなくせっかく送ってもらった原産地証明書を使用することなく通常の関税を支払ったり、原本を待っている間に保管料が嵩んで結局関税よりも高くなってしまったりということも起きかねません。
結構この問題はあるあるやねん。。
まとめ
細かな条件は色々ありますものの原産地証明書は難解なものでは決してなく、協定や基準をしっかり理解して利用すれば輸出入の双方にメリットがあります。
まずは自分の貿易取引が特恵関税を使えるものであるのかどうか、調べるところから始めてみましょう!
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