近年は海外の名産品なども割と手軽に輸入食品販売店やネットショップで手に入るようになりましたね。
「自分でも個人輸入してあの国のあれが食べたい!」や「輸入食品ビジネスを立ち上げたい!」なんて思った方もたくさんいらっしゃるかもしれませんが、食品を輸入するには通常の輸入よりも複雑で手間がかかり費用も発生する手続が沢山あります。
今回はその食品の輸入手続について解説したいと思います。食品と言っても多岐に渡りますので、タイ産の冷凍マンゴーを題材として進めていきましょう。
冷凍マンゴーの輸入方法を動画で解説!
テンポが良いと褒められました!
食品・植物を日本に輸入する
食品を輸入するのにはほとんどの場合、特別に資格や免許が必要なわけではありません。
極端な話、自動車部品メーカーが食品を輸入しようとしても、今から説明する厚生労働省や農林水産省の許可手続を取れば何の問題もありません。
1. 植物検疫・防疫をする
まずマンゴーは食品であるとともに植物でもありますので、農林水産省管轄の植物検疫所の許可を受けなければなりません。
植物に損害を与える病害虫が日本に侵入することを防止する為に必要なんだ!
後で説明しますが食品は個人使用の場合は届出が不要ですが、植物は用途に関係なくすべてが検疫の対象です。
Phytosanitary Certificateをタイから入手
植物検疫をクリアするためにまずは輸出国政府機関が発行した「植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)」の取得が必要です。
これがなければ植物を輸入することはできません。輸出者から必ず入手するようにして下さい。入手できなければ貨物は輸入できず滅却処分となってしまいます。
大体タイのマンゴー業者は手続きに慣れてるけどな。
植物、輸入禁止品等輸入検査申請書の提出
貨物が到着しましたら輸入地を管轄する植物防疫所へ植物検疫証明書とインボイス、パッキングリスト、BLなどの書類をそろえて「植物、輸入禁止品等輸入検査申請書」を提出し検査を受けます。
検査の結果、合格となれば「合格証明書」が発行されます。
万一、病害虫が発見されると不合格となりますが消毒によって病害虫を取り除くことが可能であれば消毒後に合格となります。消毒にかかる費用は輸入者負担です。
植物防疫検査にかかる費用概算
植物検疫検査手続きは輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)を使用してできますので、通関業者へ依頼するのが一般的かと思います。
費用の大体の目安としては
・植物検疫検査申請料 1品目15,000円〜20,000円
・植物検疫検査立会費用 1件 10,000円〜15,000円
・植物検疫検査シフト料 1件 25,000円〜30,000円*
・保税定温倉庫への輸送 1件 25,000円〜30,000円**(定温コンテナ(リーファー)の場合)
*輸入港コンテナヤードから植物検疫検査場所までのドレー(コンテナ輸送)料金のこと。
**検査には数日かかります。定温コンテナはCYに放置しておくわけにいきませんので保税定温倉庫へのショートドレー(短距離コンテナ輸送)が発生する為。
これくらいの費用は最低限かかってきます。検査の申請や立会は頑張って自身で行ったとしても、コンテナの輸送料金などはどうしても発生しますので、植物の輸入の際には十分注意する必要があります。
植物貿易のための輸送費用でも結構な金額がかかっちゃうね。。
2. 食品届けの提出 – 食品検疫
植物検疫をクリアしますと次は食品検疫が待っています。ここからは厚生労働省管轄の食品検疫所への申請となります。
ちなみに、個人使用目的で輸入する際には特に手続は必要ありません。自分が自宅で冷凍マンゴーを食べる場合には規制はないのです。なのでここではビジネス目的での輸入についてのお話となります。
自分が食べる分には問題ないんだよね。
まずは食品届を厚生労働省管轄の食品検疫所に提出します。
食品検疫の必要性
これは食品衛生法によるもので、人体への安全性を確保し衛生上の問題発生を防止するために避けては通れません。私たちの体内に入るものなのですから当然と言えば当然ですよね。
具体的にどの国から何をどれだけ輸入するのか、それには日本で禁止されている添加物や残留農薬などが含まれていないかなどを検疫所に届け出て、確認を受けることで税関からの輸入許可も受けることができるようになります。
届出申請は輸入地を管轄する食品検疫所にて行います。
通関業者に代行を依頼する場合は凡そ5,000円~1万円程度の代行手数料が発生します。届出のフォームは食品検疫所のサイト内にありますので、自身で申請することも可能です。
先ほどの植物検疫所も今回の食品検疫所も、基本的には各税関官署の近くにあります。
食品届申請に必要な書類
・原材料表
・製造工程表
・その他(食品による)
食品を輸入する時は必須の書類やな。
これらは輸出者側で用意すべき書類ですので、輸出すると決めたら早めに輸出者から入手しましょう。通関業者へ依頼を代行する場合にもこれらの書類を入手するのは輸入者の責任です。
食品届は貨物到着の7日前から事前提出ができますので、なるべく早く提出するようにすると良いです。なぜなら検疫所が申請書類だけでは輸入許可の判断が難しいと感じたり、何か怪しい点があると疑ったりした場合には検査になる可能性があるからです。
自主検査
検査の内容が自主検査指導などであった場合には輸入者は自己の負担で登録検査機関に検査を依頼しなければなりません。
費用が発生するのはもちろんですが、検査日数もかかります(約5営業日)ので輸入の際にはこのことも十分念頭においておくといいですね。
この検査は絶対に必要なんだ。
検査命令
また食品検疫では検査命令というものがあります。
輸入時の自主検査やモニタリング検査、国内流通段階での収去検査などにおいて法令違反が判明するなど法違反の可能性が高いと見込まれる食品等について輸入者に対し輸入の都度検査の実施を命じる制度です。
冷凍マンゴーはタイ産の場合はこの検査命令の対象なんや。。
ここでの検査の費用も輸入者が負担し、検査結果が判明するまでは輸入することができません。
一部 免除対象のサプライヤーもありますし検査命令は必ずなされるわけではありませんが要請されれば必ず検査を実施する必要がありますので注意しなければなりません。
冷凍食品規格検査
さらに付け加えますと、冷凍マンゴーは冷凍食品規格検査というものもあります。
成分規格として大腸菌群の数が規格内に収まっているか、保存基準として定められている保存温度や容器が守られているかなどの検査があります。
これらの検査命令や冷凍食品規格検査をクリアするために分析検査費用として大体8万~9万円程度の費用がかかります。
食品検疫の検査もかなりの金額がする!!
今回は冷凍マンゴーを題材にとって解説しておりますが、他の食品でも様々な検査が設定されております。
輸入の前にはそれぞれの食品についてどのような検査が必要か、どれくらいの費用が発生しそうかをあらかじめ下調べすることが大切です。
検査合格 – 食品等輸入届出済証
書類審査・検査の結果、違法でないと判断されると「食品等輸入届出済証」が輸入者に渡されます。
税関で輸入申告を行う際にこの届出済証と植物検疫の合格証明書を添付し、申告の際に番号も入力することで税関からの輸入も許可されます。
つまりこの二つの検疫を経てやっと税関からの輸入許可が叶うこととなります。
まとめ
冷凍マンゴーの輸入くらい簡単に出来そう!と思われていた方もいらっしゃるかもしれませんが、一般的な商品の輸入よりもかなり手間と費用が掛かることをご理解頂けましたでしょうか。
かといって食品や植物の輸入をお勧めしていないわけでは決してありません。このような手続と費用が掛かることをきちんと理解し、正しい手順を踏めば問題なく輸入をすることができます。
通関業者でも食品専門のチームがある会社もありますので、そのようなところに依頼をして協力しながら二人三脚で進めていくと良いでしょう。
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