タイ産の食品と言いますとマンゴーやドリアンなどの植物・フルーツを思い浮かべる方が多いと思いかもしれません。タイは植物だけでなくブロイラー(食肉用の鶏)の飼育量が多く日本にとって最大の鶏肉・鶏肉調製品供給国なんです。
生産量こそ米国やブラジルに比べると少ないですが、きめ細かなカットや異物混入の低減などによりシェアを伸ばし冷凍鶏肉などの合計輸出額はブラジル次ぐ世界第二位で米国と同程度にまでなりました。
日本の鶏肉などの合計輸入額を国別にみてもタイが一番大きいんだよ!
そんなにタイ産の鶏肉を食べている実感はないかもしれませんが、マクドナルドのチキンナゲットはタイ産の鶏肉なんです。先日、イオンの食品売り場で売られていた鶏肉の唐揚げも原産地を見たらタイでした。身近なところにタイ産の鶏肉はたくさんあるのです。
ではこのタイ産の冷凍鶏肉をどのような手順で輸入するのか?詳しく説明していきたいと思います。
食肉の輸入について動画で解説
ニッチな動画をつくってしまった。
冷凍鶏肉の輸入概要
食肉及び食肉製品の輸入に際しては家畜伝染予防法に基づく畜産物の輸入検査と、食品衛生法に基づく食品等輸入検査を受ける必要があります。
その2つをクリアしてから税関での申告となります。一つずつ見ていきましょう。
1. 動物検疫をする
まずは家畜伝染予防法に基づいた動物検疫の手続についてご説明します。
海外から家畜の伝染病の侵入を防止するため、農林水産省が動物検疫所にて家畜から作られる肉製品などの畜産物を対象に輸出入検査を行っています。この検査は量の多少・個人用・商用等の用途にかかわらず必ず受ける必要があります。
食肉は家畜伝染予防法に基づく指定検疫物です。輸入される動物や畜産物などを介して日本に家畜の伝染性疾病の病原体が持ち込まれる恐れがあるので動物や畜産物などのうち特にその可能性の高いものを指定検疫物として指定しており鶏肉もそちらに該当します。
タイでHealth Certificateを取得する
指定検疫物の輸入にあたっては輸出国の政府機関、つまり日本の動物検疫所に相当する期間が行う検査に合格し、その機関の発行した輸出国検査証明書(Health certificate)の添付がなければ輸入してはならないとされています。
難しく聞こえますが輸出国での検査や証明する事項は輸出国と輸入国の間で事前に決められておりますし、普段から鶏肉を輸出されているタイの業者さんは慣れています。輸出が決まったらこの検査証明書を輸出者より入手しておきましょう。
貨物が到着してからの手続きの流れ
貨物が日本の港に到着しましたら原則として検査を希望する日の前日までに輸入港を管轄する動物検疫所へ以下の書類を提出して検査を受けます。
・輸入検査申請書(畜産物)
・Health Certificate
・B/L
・Invoice
・Packing List
検査の結果 合格となれば「合格証明書」が発行されます。万一、伝染性疾病の病原体への汚染(または汚染の可能性)が発見されると不合格となりますが消毒後に合格となります。
ちなみに消毒にかかる費用は輸入者負担やで。
動物検疫の費用概算
動物検疫検査手続きは輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)を使用してできますので、通関業者へ依頼するのが一般的かと思います。
費用の大体の目安としては
・動物検疫検査申請料:15,000円〜20,000円/品目
・動物検疫検査立会費用:10,000円〜15,000円/件
・動物検疫検査ショートドレ-料:20,000円〜25,000円/件 *MGシャーシ利用
これくらいの費用は最低限 必要なんだ。
検査の申請や立会は頑張って自身で行ったとしてもコンテナの輸送料金などはどうしても発生しますので、鶏肉の輸入の際には十分注意する必要があります。
2. 食品届の提出 – 食品検疫
動物検疫をクリアしますと次は食品検疫が待っています。ここからは厚生労働省管轄の食品検疫所への申請となります。
マンゴーの輸入解説でもお話ししましたが個人使用目的で輸入する際には特に手続は必要ありません。自分が自宅で冷凍鶏肉を食べる場合には規制はないのです。
なのでここでは商売目的での輸入についてのお話となります。
近年は海外の名産品なども割と手軽に輸入食品販売店やネットショップで手に入るようになりましたね。 「自分でも個人輸入してあの国のあれが食べたい!」や「輸入食品ビジネスを立ち上げたい!」なんて思った方もたくさんいらっしゃるか …
食品検疫の必要性
まずは食品届を厚生労働省管轄の食品検疫所に提出します。
これは食品衛生法によるもので、人体への安全性を確保し衛生上の問題発生を防止するために避けては通れません。私たちの体内に入るものなのですから当然と言えば当然ですよね。
具体的に冷凍鶏肉をどれだけの量でタイのどこの誰から輸入するのか、それには日本で禁止されている添加物や残留農薬などが含まれていないかなどを検疫所に届け出て確認を受けることで税関からの輸入許可も受けることができるようになります。
食の安全は本当に大切だからね。。
届出申請は、輸入地を管轄する食品検疫所にて行います。通関業者に代行を依頼する場合は凡そ5,000円~1万円程度の代行手数料が発生します。届出のフォームは食品検疫所のサイト内にありますので自身で申請することも可能です。
動物検疫所も食品検疫所も基本的には各税関官署の近くにあるで。
食品届に必要な書類
・製造工程表
・原材料表
これらは輸出者側で用意すべき書類ですので、輸入が決まったら早めに輸出者から入手しましょう。動物検疫でも提出した輸出国検査証明書は検疫合格後に返却されますのでそれを食品検疫でも提出すればOKです。2通必要なわけではありません。
食品届は貨物到着の7日前から事前提出ができますのでなるべく早く提出するようにすると良いでしょう。
検疫所が申請書類だけでは輸入許可の判断が難しい判断する時があるんや。。何か怪しい点があると疑われたら検査になる可能性があるからな。。
食品検疫の検査
検査の内容が自主検査指導などであった場合には輸入者は自己の負担で、登録検査機関に検査を依頼しなければなりません。
検査は大体5営業日ほど時間がかかるよ。
書類審査・検査の結果、違法でないと判断されると「食品等輸入届出済証」が輸入者に渡されます。
3.税関で輸入申告をする
1. 動物検疫の合格証明書(動物検疫)
2. 食品等輸入届出済証(食品検疫)
3. B/L
4. Invoice / Packing List
これらの書類をもって申告の際に以下の税表番号も入力することで、税関からの輸入も許可されます。
税表番号:0207.14.220
一般関税:12%
EPA関税:8.5%
決して低いとは言えない関税がかかってきますのでこちらも忘れないで下さい。EPAを使う場合には原産地証明書の入手も必要です。
鶏肉は部位によって申告内容が異なる
鶏肉は骨付きのものや一匹丸々のもの、そして肝臓などの内臓といった部位によって税関への申請が変わってきます。
単に「ブロイラー」の輸入申告ではなく、部位や冷凍・生鮮までも具体的に説明しなければいけないんだ!
まとめ
タイから冷凍の鶏肉を輸入する流れはざっとこんなところです。食肉を輸入するなんてハードルが高い、と思っていた方もいらっしゃるかもしれませんが、一つ一つの手順をちゃんと踏めば実現でいることがお分かりいただけましたでしょうか。
昨今のヘルシーブームにより、鶏肉の需要は今後も高まると予想されます。安全で安心でおいしい冷凍鶏肉を輸入することで日本の人たちの健康維持に貢献出来たりします。
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