海運業界の脱炭素!LNG/水素/アンモニア/メタノール船舶燃料の特徴について
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海運業界の脱炭素について!

海運業界の脱炭素!LNG/水素/アンモニア/メタノール船舶燃料の特徴について動画で解説

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8分10秒の動画やで!

どうもこんにちは飯野です。

今回は海運業界における脱炭素燃料の現状についてお話していきたいと思います。

脱炭素という言葉は昨今のニュースで毎日出てくる、各業界でのホットなキーワードです。世界中の各企業によって、地球環境の為に CO2を始めとする温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けて様々な取り組みが日々行われています。

海運業界の脱炭素


それは海運業界においても同じです。国際海事機関(IMO)は2050年までに船舶から排出される温室効果ガスを50%以上削減すると目標に掲げました。

その目標を達成する為に海運業界では船舶燃料の見直しが始まっています。

今回は海運業界の脱炭素に向けた次世代燃料を紹介し、それぞれの現状や課題について解説していきたいと思います。

それでは言ってみましょう。

IMOが掲げる脱炭素の目標


まずIMOが掲げる脱炭素への移行には、3段階あるとご理解ください。

1.2030年までにGHG排出量を40%以上削減する
2.2050年までにGHG排出量を50%以上削減する
3.今世紀中にゼロにする

このように段階的に目標が分かれているので、

2021年の現在から
短期目標として2030年までに実行する施作
中期目標として2050年までに実行する施作があります。

現在の船舶燃料の課題


現在、船舶燃料には重油が使用されています。

物流・海運業界で働いている方なら2020年1月より義務化された、低硫黄重油のことは聞いたことがあると思います。LSSというサーチャージとして日頃の実務で身近なものですよね。

低硫黄重油はPM2.5の大気汚染対への対策だったのですが、今回のテーマは地球温暖化に繋がる温室効果ガスです。低硫黄であろうと重油であればCO2が排出されてしまうので、別の燃料に変えましょうという流れが起きています

注目の次世代燃料


その次世代燃料として特に注目されているのがLNG(液化天然ガス)、アンモニア、水素、そして最近ではメタノールも挙げられています。

変えるのは燃料だけではありません。これらの燃料への切り替えにあたり、エンジン、燃料タンク、燃料供給インフラも一緒に変えていかなければいけないのです

これらを交えて各燃料について解説していきます。

LNG(液化天然ガス)


まずLNG(液化天然ガス)です。LNG燃料は船舶燃料として既に実用化されています

CO2削減効果は重油と比べ約26%削減、Sox(硫黄酸化物)はゼロに、Nox(窒素酸化物)は約30%削減できると言われています。

しかし、LNGをエンジンで燃焼した時に、未燃焼メタン(メタンスリップ)が漏出するとされています。メタンスリップはCO2の約25倍の温室効果があります。家畜としての牛がメタンを出すので、同じく問題とされていますよね。

まだメタンスリップ抑制に対する規制がないので、今後IMOがメタンスリップに関わる国際基準を作っていくことが想定されます。

アンモニア


次にアンモニアです。アンモニアはこれまで主に肥料として使われて来ましたが、近年になって燃料への用途が注目されています。肥料用としてアンモニアは一般的に流通しているので、輸送と貯蔵のノウハウが確立されているのが特徴です

アンモニアを使うとCO2排出量はゼロになりますが、アンモニアを燃料として使う燃料エンジンがまだ開発されていません

アンモニアは燃えにくいため、効率よく燃焼させる為の技術が必要なことと、CO2の約300倍の温室効果があるN2O(亜酸化窒素)の発生対策が必要になります。

また体積が重油に比べると2.7倍と大きく 、燃料タンクが大きくなってしまい 輸送スペースが減ってしまいます。貨物輸送では効率化が非常に重要なので、ここも見逃せないポイントです。

またアンモニア自体が毒性、腐食性の危険物なので取り扱いの安全性にも注意しなければいけません。

水素


そして水素です。水素燃料は自動車でも注目をされていますよね。水素を燃焼してもCO2、Soxは排出されませんが、Noxが発生する為これを抑える技術が必要です

水素もアンモニアと同様で船舶用の燃料エンジンがまだ開発されていません。水素を液体として保管・貯蔵するには-253度に冷却する必要があり、また更に体積も大きく重油の4.5倍もあります。その為 燃料タンクが必然的に大きくなります。

そしてアンモニアとは逆で、水素は非常に燃えやすいので燃焼速度が速く、高い燃焼抑制技術が必要になります。それに加え、輸送や燃料供給のインフラ設備もまだまだな状態です。

メタノール


そして最後にメタノールです。メタノールは天然ガスや石炭、再生可能エネルギーなどから生産可能で、燃焼した場合 CO2は10%削減、Soxはゼロ、Noxは30%削減されると言われております。

CO2削減については天然ガスなどを原料にした場合はそれほど効果が見込めませんが、再生可能エネルギーから作ったものであれば、大幅にCO2が削減されるとのことです

既に船会社大手のマースクが業界初のメタノール使用のコンテナフィーダー船を発注したと先日ニュースになっていました。そういう意味でアンモニアや水素に比べて早く導入が進んでいく可能性があります

各燃料の特徴まとめ


それぞれの燃料の特徴をまとめるとこのようになります。

・LNG
利点:CO2削減約26%、導入実績あり
課題:メタンスリップ(温室効果:CO2の25倍)が発生

・アンモニア
利点:CO2発生ゼロ、肥料用として輸送・貯蔵ノウハウあり
課題:難燃性、N2Oの発生(温室効果:CO2の300倍)、体積2.7倍、毒性

・水素
利点:CO2発生ゼロ
課題:高い燃焼抑制技術が必要、体積4.5倍、貯蔵技術・インフラが未整備

・メタノール
利点:CO2大幅削減(再エネ生産時)、導入実績あり
課題:体積2.4倍、LNGと比べると割高

それぞれの燃料に特徴があり、また今後の技術開発も大きなポイントとなっています

船会社による脱炭素に向けての動き


まず短期目標である2030年のGHG40%削減に向けて、現在 各船会社はLNG船を発注しています。

コロナによるコンテナ不足・スペース不足の問題で 昨今大きく利益を上げていると話題の各船会社ですが、次々に設備投資をしている印象です。

アンモニアや水素はこれからの技術開発が注目のポイントになります。水素は今のところ水素燃料電池を使った旅客船の開発に成功していますが、貨物船への採用には まだまらこれからというのが現状です。

次世代燃料の主役はどれだ!?


国土交通省のまとめによりますと、2050年における海運の消費エネルギーの内訳はLNGが42%、水素・アンモニアが45%となっています。

短期・中期的にはLNGは主力燃料であることが想定されていますが、最近では大手企業が原料のアンモニアやメタノールを生産する会社を設立したり、出資も始めたりしています。

これからも各社の動きに注目ですね。

まとめ


今回の内容はいかがだったでしょうか。

海運業においての脱炭素の取り組みの基礎についてお話をさせて頂きました。次世代エネルギーの主役争いが、これからどのようになっていくのか、非常に面白い展開だなと個人的には思っています。

このチャンネルでは貿易・国際物流に関する情報を分かりやすく配信していますので、チャンネル登録がまだという方はこの動画の終わりに是非とも宜しくお願いします。

今回は以上です!ありがとうございましたー!


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飯野飯野

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