貿易取引においてインコタームズを正しく理解する事で売り手・買い手間におけるトラブルを出来るだけ小さくする事が出来ます。
今回はEXWに焦点を当てて、輸出側(売り手)と輸入側(買い手)のそれぞれの立場でのメリットとデメリットについて解説をしていきたいと思います。
それぞれのメリット・デメリットを理解する事で自分がどちらかの立場になった時にやりやすい条件を選べるからね!
またインコタームズにおける基本的な情報につきましてはこちらにまとめています。
貿易用語で最初の関門とは何でしょうか。私はインコタームズだと思います。CFRやEXWなど英単語3文字で表現されるインコタームズは何と11種類もあります。 でもご安心ください。ぶっちゃけフォワーダー歴8年の筆者も11種類の …
EXW(Ex-Works)について動画で解説
輸出者と輸入者の立場でそれぞれのデメリットについて解説をしていますので、是非ご参照ください。
EXWとは
EXW(エクスワークス、またはイーエックスワークスと読む)は、貿易の取引条件を示すインコタームズと呼ばれる略称の一つです。
日本語では工場渡し条件、または工場引き渡し条件とも言います。
EXWの特徴
インコタームズには、全部で11種類の貿易条件がありますが、EXWはその中で最も売主にとって負担が少なく、リスクが小さい条件です。
EXWは売り手にとっては一番楽な貿易条件なんや。
EXWにおける費用負担・危険負担の分岐点
EXWでは売主が自社の拠点である工場や倉庫などにおいて貨物を買主に引き渡した時点で、費用と危険を負担する責任が買主へと移ります。
一般的にはコンテナやトラックに積み込んだら後は買い手の責任になっちゃうね。
つまり引き取りに用いるトラックの経費などの輸出国での輸送費用から、輸出通関、船・飛行機等の運賃、輸入地での輸送費用まで、その後の費用や危険は全て買主が負担することになります。
インコタームズとして定められた11規則の中で買主側が輸出国での輸送費用や、輸出通関の費用を負担する規則はEXWだけとなっています。
ただし売主も関係省庁から輸出認可を取得したり輸出通関を行う際に輸入者が必要とする情報を提供したりすることについては、売主はサポートする義務があると定められています。
貿易取引で大切なんは、何と言っても人間関係やからな!
輸出者側から見たEXWはどんな条件?
輸出者側から見れば商品を期日内に生産し、自社の敷地内で買主に貨物を引き渡せば後はほぼ全ての業務を買主である輸入者が行ってくれるということになります。
売り手は作る事だけに専念する事が出来るよ!
そうした意味では、これから海外への輸出を始めようとしている場合や、輸出先の国が初めての貿易相手国である場合などに適した貿易条件だと言えます。
ほとんど知らん国に荷物送るのは、余計な心配が増えるしな。。
輸出経験の少ない事業者様はEXW条件での取引を検討してみると良いかもしれません。
輸出者側のメリットとデメリット
では輸出者側から見たEXWのメリットとデメリットについて考えてみましょう。
輸出者側のメリット
輸出者としては貨物を自社の敷地で引き渡すだけで良いので梱包費用などを除いて基本的に物流費用は発生しません。
また事故や誤配など運送の間に生じる可能性のある危険についても輸入者側が責任を負うので危険負担も少なくて済みます。
ホンマに楽の一言やわ。
さらに、フォワーダーなどとの契約や通関などの事務手続きも輸入者側の義務となり輸入者側が指定したフォワーダーが行うので輸出に伴う業務の負担も最小限となります。
こうしたメリットをまとめると、以下のようになります。
輸出者がEXWを利用する時のメリット
・運送などの費用負担が最も抑えられる。
・事故などがあった時の危険負担が最も少ない。
・通関などの貿易手続きを行う必要がない。
輸出者側のデメリット
ではEXWでは輸出者にとってのデメリットはないのでしょうか?
確かにEXWは最も輸出者の負担が少ないと言われていますが、買主との関係を考えると立場的に不利になることも考えられます。
実際の取引を考えてみましょう。
EXW条件で輸入を行う場合、事業者は相手の敷地内での貨物引渡し後 全ての運送業務を自社で手配しなければなりません。
そのためには、貿易取引について熟知している必要があります。つまりEXWにおける輸入者は貿易のベテランである可能性が高いのです。
ベテランと取引するのは色々と楽だけど、価格は結構シビアになるんだよね。。
このような取引相手に対し、輸出者が価格面で良い条件を引き出すことはかなり難しいと考えられます。相手は貿易の上級者である上、運送などのリスクを引き受けてくれるのです。
比較的経験の浅い輸出者の場合、EXWではこうした理由から国内外の販売価格を利用して大きく儲けるといったことは難しくなる可能性があります。
デメリットをまとめると以下のようになります。
輸出者がEXWを利用する時のデメリット
・貨物受渡し以降の輸送手段などを選ぶことができない。
・買主が多くの業務を負担するため、価格交渉において不利になることも。
輸入者側から見たEXWはどんな条件?
輸入者側から見るとEXWは貿易相手国における輸送から全て自社で手配する必要があるので、現地の取引に慣れているなど豊富な経験や知識が必要とされる条件です。
輸入者側のメリット、デメリット
今度は輸入者側からみた場合EXWにはどのようなメリットとデメリットがあるのかを考えてみましょう。
輸入者側のメリット
EXWは輸入者にとって良い点もあると考えられます。
EXWでは自社で運送会社や保険会社を選択することができるので、そうした意味でもEXWが買主にとっては最も安く輸入することができる条件だと言われています。
全部自分のコントロール内というのも魅力的!
さらに、輸送などの手間やリスクを全て自社が負担することで値下げなどの有利な条件を相手に提案する事が可能です。
輸入者がEXWを利用する時のメリット
・商品を最も安く輸入することができる条件と言われている
・輸送や危険の負担を担う分、取引相手との交渉において有利な立場に
輸入者側のデメリット
輸入者側のデメリットはやはり輸送に伴う危険を最も幅広く負担しなければならない点でしょう。
輸出者の敷地からあらかじめ定められた国内の地点まで全てのリスクについて責任を持たなければなりません。
また輸出国での輸送や輸出通関を行わなければならない為に、取引を行っているフォワーダーがそれらの手配について得意なのか可能なのかを確認する必要もあります。
フォワーダーの腕が関係してるのは厄介やな。。
もし取引先のフォワーダーがそれらの業務を行うことが出来ない場合は、他のフォワーダーを探すかEXWの使用を避けて契約しなければなりません。
輸入者がEXWを利用する時のデメリット
・危険や費用の負担について、最大の範囲で責任を負う必要がある
・輸出国での通関やフォワーダーの選定などについて、高い能力が必要とされる
まとめ
今回はEXWについて詳しく見てきました。輸出者・輸入者の双方の立場からEXWの条件を考えていますので自社の状況に照らし合わせてお読みいただけるとよりイメージしやすいかと思います。
EXWはインコタームズの中では最も輸出者側の負担が少ない条件ですので、これから海外へ販売展開を考えている会社などは取引相手に一度EXWでの取引を打診してみるのも良いかと思います。
また、輸入者の場合も価格を抑えたい場合はEXWで輸入を行うことができないかフォワーダーなどと相談して検討してみると良いでしょう。
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