保税地域とは?通関手続きに関わる原則を解説しました!

輸出入で取り扱う貨物については輸出入の手続き前に、指定の指定の場所に搬入をする作業が生じてきます。

実は貨物の搬入場所には、明確なルールが存在しています。

まずは貨物を保税地域と呼ばれる場所に搬入をすることが多いのですが、保税地域とは一体どのような場所で どういった取り決めがあるのでしょうか?

保税地域は税関で取り決められ、輸出入代行業者の業務に大きく関わっています

保税地域とは?

保税地域とは何かを理解する前に、まずは一旦輸出入の原則から考えてみましょう。

輸出の手続きの流れについては、次のようになっています。

輸出手続きの流れ

1. 国内貨物を搬入
2. 輸出通関で申告を行う
3. 外国貨物として船会社もしくは航空会社へ搬入
4. 海外へ運ぶ

輸出では初めに国内貨物をshipperの元から指定の場所まで搬入しています。

続いて、輸入の流れです。

輸入手続きの流れ

1. 外国貨物を搬入
2. 輸入通関で申告を行う
3. 国内貨物として日本国内へ配送する

輸入の場合では、初めに航空輸送もしくは海上輸送で外国から運ばれてきた貨物を飛行機・船から引き取り、指定の場所(上屋、ターミナル)へ搬入しています

※輸入通関時には、対象の貨物に関税が発生しています。

ネコ先輩ネコ先輩

ポイントは通関手続きをしたときに対象の貨物が、外国貨物(外貨)の扱いか、国内貨物(内貨)の扱いか、いずれかに変わることだよ!

内貨と外貨の違い

扱いが変わるだけで、貨物そのものの内容は変わりませんが、輸出時に国内貨物⇒外国貨物、輸入時は外国貨物⇒国内貨物へと扱いが変化しています。

外貨とは、輸出時に通関で許可を受けた後の貨物、輸入時は通関前に外国から日本に到着した貨物を示します

カモメ先輩カモメ先輩

外国貨物扱いの場合、日本国内の貨物とはちゃうから、どこに持ち込んでもええって訳とちゃうねん。

なので、日本国内にありながら外国貨物もそのまま持ち込みや保管ができ、日本ではない地域として保税地域というものが設けられています。

保税地域と通関について

通関手続きをする際には貨物を保税地域に持ち込み、通関許可が切れると貨物が内貨から外貨へもしくは外貨から内貨へ切り替わります

基本的には、申告をして外貨もしくは内貨に切り替わった後に他の場所に輸送手配を行います。

保税地域に搬入し、申告をせずにそのまま貨物を保管している場合もあります。

保税地域の定義


保税地域とは、関税法第30条で定められており、日本国内で外国貨物の積み下ろし・運搬・保管ができる場所のことを示します。

外国貨物は、原則保税地域以外に置くことはできません

よって、輸出入時に外国貨物扱いとなっているものは、保税地域に置かれなければなりません。

では、なぜ外国貨物に関して保税地域が設けられているのでしょうか。

保税地域は、税関がある場所から指定の距離までの間で設けられていなければならず、貨物は税関の管轄下に置かれ管理がしやすくなっています。

また、輸入通関時には申告貨物に対し関税を徴収しなければなりません。取り纏めて貨物を集約している保税地域が、確実な関税の徴収にも役立っていると言えます。

5種類の保税地域


保税地域は、機能と目的によって5つに分類されています。

それぞれの保税地域によって、貨物の保管期間も異なります

①指定保税地域
②保税蔵置場
③保税工場
④保税展示場
⑤総合保税地域


税関ホームページより(https://www.customs.go.jp/hozei/)

①指定保税地域

保税地域は、大半が税関長の許可を基に設置されますが、その中でも指定保税地域のみは財務大臣の許可の下設置されることになります。

国、都道府県、市などの公共団体が所有・管理している土地や建物などに設置していますが、一時的に貨物を蔵置することを目的としているため、蔵置期間は他の保税地域の種類と比較して、1カ月と短くなっています

②保税蔵置場

保税蔵置場とは、フォワーダーが自社の倉庫や貨物施設で設置している場合が多いです。

貨物の積み下ろしから、保管までをすることを目的としています。保管をしている期間は、輸入の関税はかかりません。

輸出入の貿易実務においては、保税蔵置場へ貨物を運ぶ手配をすることが多くなっているため、必然的に関わる機会が最も多いと言えるでしょう。

③保税工場

保税工場は、外国貨物の加工・製造ができる保税地域です。

加工食品や工業製品がよく製造されています。

④保税展示場

保税展示場は、外国貨物を展示する会場とされています。

外国貨物を、関税を課さずに展示に利用できる場所で、国際的な博覧会や商品の展示場として利用されています

展示を目的として利用するため、蔵置期間は税関長が認めた期間となっており、特に定められていません。

⑤総合保税地域

総合保税地域は②~④の保税地域の総合的な機能を持っている保税地域とされています。

保税蔵置場を巡る動き


紹介した5種の保税地域の中でも、フォワーダーの業務に日頃大きく関わっているのが、②の保税蔵置場です。

保税蔵置場は貨物を搬入し、保管まで出来る働きをしています。

フォワーダーが自社倉庫を保税蔵置場として新たに設置ケースもありますが、その際には税関への申請が必要となります。

保税蔵置場の場所は、地域管轄の税関から25km~100kmの距離に設置するように取り決めされています。

空港や港周辺は税関も近くに位置し、貨物の輸送のため、フォワーダーなどの自社貨物施設が集中しています。

カモメ先輩カモメ先輩

倉庫は場所が命やからな。

倉庫が空港や港から近ければ、輸出時に貨物が倉庫に搬入してから、船会社や航空会社への持ち込みを早くすることができます

すると輸出通関後の、貨物を海外に輸送するスケジュールに融通が利きやすくなるメリットがあるわけです。

例えば航空会社へ短時間で持ち込みができれば、搬入した後の貨物に対し、追加で時間のかかる梱包などの作業もしやすくなります。

フォワーダーの保税倉庫申請がしやすくなった

航空貨物に関しては、近年税関行政の規制が緩和された影響により、取り扱い貨物量の多い成田空港周辺にフォワーダーの貨物施設が増加した流れがありました。

元々は保税蔵置場は空港内か公共の航空貨物ターミナル内で設置され集約されていましたが、フォワーダーが持つ倉庫などの貨物施設の許可申請がしやすくなりました。

カモメ先輩カモメ先輩

保税倉庫でちょっとした作業とかしたいしな。

他に、近年特定輸出申告制度が新たに定められました。

これによって、特定の荷主が輸出申告を行う場合には、貨物を保税地域に搬入をしなくても申告を行うことが可能になりました

これにより、輸出貨物のよりスムーズな手続きや運送が可能となった流れがあります。

ネコ先輩ネコ先輩

色々とやりやすくなってきた流れがあるよね!

まとめ

保税地域は、多くのフォワーダー業務に当たり前に関係していますが、安全な貿易のための管理や規制に役立っていると言えます。

近年は保税地域に関する規制緩和の動きがありましたが、今後も貿易体制の変化で保税地域を巡る、法令全体の動きがあるかもしれません。

輸出入の手続きに関わるため、注視していく必要があるでしょう。