最近、書籍などでよく見かける悲しいフレーズがあります。「日本は30年間、負け続けてきた」、「格安の国、ニッポン」。
一時期はGDPが世界で第2位という国だったにも関わらず、このような事になっていると知ると少し寂しい気持ちになります。
日本だけで生活をしていると、「そんなことはない!」と思うかもしれません。信じたくないかもしれません。
しかし、タイに住んでいるとこれは事実だと実感する場面が多くあります。一応、当ブログは物流に関する情報を発信していくブログなので、物流にも絡めてお話をしていきたいと思います。
タイのお寿司事情
最近タイにスシローが出来ました。オープン前からもの凄い注目を集め、連日満員御礼。休日の昼の時点でその日はもう入れないと看板が立っているほどです。
なぜこんなにも多くの人がどっと押し寄せるのか?
安いから!
確かにスシローのお寿司は価格を見る限り日本と同じくらい。そして逆説的にいうと、他のタイの寿司屋が高すぎるんです。
安い感じの店で、比較的安いネタ(イカとか)でも、おにぎりみたいで2貫で80バーツ(300円)とか。
日本なら安い店でトロいけるやん!?
確か日本の高くないお店だったら、2,000円で そこそこ満足出来るくらい食べられたと記憶しています。
日本は安い国になった!?
冒頭に説明したように、これは色んな書籍やネット記事などで最近よく見かけるテーマです。一昔前に中国人の爆買いというのが話題になりましたよね。
あれを単に、沢山売れて嬉しい!日本経済に貢献してくれる!と楽観的になっているのは周りが見えていない状態。
「やっぱり日本製だよね。」と思われるかもしれませんが、それもあるかもだけど、中国人にとって「日本で買う日本製は安い」から爆買いしていくんです。
他にもこのニュースピックスの特集にもっと詳しく書いています。
一部参考に抜粋をさせて頂きます。
アメリカ:1,739円
フランス:1,692円
香港:1,147円
マレーシア:921円
日本:790円
By NewsPicks編集部
タイでも一風堂のラーメンはサービスチャージ(10%)とか入れたら1,000円くらいする。。
日本は物価が上がっていない
日本は1999年から続くデフレの影響で物価が上がっていません。
「日本 消費者物価指数」で検索してください。
先進国にも関わらず、物価が安い。
しかも、それが2021年の今の日本人の消費者マインドでも「安いが当たり前」になっています。
タイの物価はどうだろう?
一方で私が住んでいるタイの物価は継続的に上がっています。
タイのローカルのお店や屋台で食事をする分には安いですが、日本食、韓国料理、イタリアン、スパニッシュとかの普通の店になると結構な金額になります。
2人で3,000〜4,000バーツくらい(約1万円〜1万3千円)。
もっと高価格帯のお店も沢山あり、タイは以前のような安い国ではないと実感します。
日本の物流はどのように関係している?
デフレの話は詳しい経済学者さんにお任せをして、この物価が上がっていない状況、または日本が安い国になっている状況を海運関係者の視点から考えをお話しします。
実は日本発の海上運賃は世界でも安い方なんですね。こちらの動画でも解説をしましたが、日本の船会社は長らく大手荷主との取引において安売りを続けていました。
このように大手荷主の立場が強かったんです。海上輸送というのは特徴を出したり、差別化するのが簡単ではありません。その為、価格が高かったり、ひどい場合は荷主に気に入られないと簡単に切り替えられてしまいます。
こういう商習慣的なところから海上運賃はずっと低水準でした。
もちろんこの安い物流価格も、安い製品価格に貢献しています。消費者にとっては嬉しいことかもしれませんが、マクロな視点から見るとこれは良いことなのでしょうか?
やっぱり製造大国!中国の物流はどうなの?
今回のコンテナ不足の問題によって感じたのは、中国の荷主の金払いの良さです。
中国から北米向けは3倍、4倍の価格に跳ね上がっているにも関わらずコンテナが中国に集まるということは、中国の荷主はそれを普通に受け入れています。
政府が補助金とか出してないのかな?
すると船会社は金払いの悪い日本にコンテナをまわすより、金払いの良い中国にコンテナをまわす方が儲かります。だから日本のコンテナ不足は深刻でした。
日本の荷主さん、読んで。
>日本の荷主はこれまで、運送コストに厳しすぎました。しかし、今回のコンテナ不足を機にある程度までの値上げを適正価格として受け入れなければ、より高い運賃を提示する海外勢に買い負ける事態が起こります。これによって日本にモノが入りづらくなることも考えられます。 https://t.co/MS8xyOzfxI
— イーノさん@物流会社の社長🇹🇭 (@iino_saan) April 18, 2021
コンテナ不足が半年以上続いていて、さすがに日本の荷主も貨物が出せないと問題になるので、高い運賃でも条件を飲まざるを得ない状況です。
ONEですら他のマーケットに注目をしている
そして日本の船会社であるONEであっても、日本以外のマーケットに目を向け始めています。
ONE、アジア―東アフリカ 新サービス今月末開始
オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)は15日、3月末からアジアとアフリカ東岸を結ぶ直航サービス「EAF」を開設すると発表した。ONEにとって東アフリカ向けサービスは「EA1」「EA2」に続き3ループ目。ケニアやタンザニア向けサービスを強化することで、アフリカ市場への展開をさらに進めていく。ルーローテーションは次の通り
上海▽寧波▽南沙▽シンガポール▽ポートクラン▽モンバサ▽ダルエスサラーム▽ポートクラン▽シンガポール▽上海引用元:日本海事新聞 ONE、アジア―東アフリカ 新サービス今月末開始
日本の物流の傾向はこのように変わるかも
物価を上げるための議論は専門ではないので控えますが、この状況が続くと日本の物流・国際物流においてだとこんなことが起きるような気がします。
日本のマーケットの今後の予想
私の勝手な予想です。
・海外から日本に行くインバウンド旅行のは需要は延びる(安いから)。
・日本国内の製造業としては減少・衰退が進んでいく(他国で作る方が安いから)。
・高度な製造技術が必要なものは日本で作られる(多分)。
・他の国で作れるようなものは海外で安く作る。
・最終製品にまで作りあげて日本に輸入する。
・3Dプリンターで作れる物は国内で作って国内配送する。
・これまで材料を輸入していた分の国際物流が減少する。
・製造を海外に軸足をおくことになるので、日本からの輸出も減少する。
・先進国として利便性を追求。お届けまでの最後の物流(ラストマイルの物流)に注目が集まる。
・物流センターとかドローンとかが重要になってくる。
やはり製造という側面が弱くなり、原材料の輸入、製品の輸出が減っていくでしょう。しかし、製品の消費は人が生きる上では必要だし、海外で安く作られるので安い商品が輸入されてきます。
まとめ
日本は他の国に比べて相対的に物価が上がらず、安い国になってしまいました。長期的に続いたデフレマインドもありますが、物流という観点から見ると、それは大手荷主さんの厳しい物流コスト基準が問題もあります。
現在のコンテナ不足ではそれが原因で、船会社も日本以外の国に注目をしています。今後 日本の製造業は減少傾向にあり、日本の国際物流・国内物流も形が変わっていくでしょう。
しかし、これがダメとか悲しいとかではなく、日本は「きめ細やかなサービス」、「おもてなしの心」のような”サービス”の方が海外より圧倒的に優れています。
だから、戦後の復興→高度経済成長→モノづくりで急成長→バブル&崩壊→そこから平成は負けまくったけれども、令和の時代以降は新しい形で更に価値のある国になっていって欲しいと願っています。
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