中国電力不足による海運市況への考察
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中国電力不足による海運市況について!

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どうもこんにちは飯野です。

今回は昨今の中国の電力不足から、今後の海運市況を考察してみるというテーマでお話をしていきたいと思います。

2021年は中国発北米向けの海上運賃は過去最高の値上がりを見せていましたが、10月の国慶節を前にして、突然スポット運賃が急落しました。

これには中国の電力不足が関係していると言われています。

この中国の電力不足の原因や、これが引き起こす今後の影響について詳しく知ることによって、これからの海運マーケットの動きを考えてみたいと思います。

アメリカの最新の物流状況も合わせて見ていきます。それではいってみましょう。

中国発北米向けスポット運賃急落

まずは、中国発の運賃の急落についてです。2021年9月下旬に中国から北米向けのスポット運賃に大きな変化が現れました。

40footコンテナあたり、USD 15,000 から USD 8,000と約半額の値下がりがあったのです。

値下がりの原因は理由としては日本でも大きく報じられた中国の電力不足から引き起こされています。

電力不足による停電が起こることで工場の生産に影響が出ることになり、10月1日からの国慶節前に生産を終えることが出来なかった多くの工場が本船予約をキャンセルしました。

ニュースではスペースを在庫することが出来ないフォワーダーが投げ売りのような形でスペースを販売したと報じられています。

今回の出来事は国慶節という休み前というタイミングもあり、生産量を減らしたことに繋がっているかもしれません。

中国電力不足の原因

今回は電力不足から運賃急落が引き起こされたのですが、それではなぜ中国で電力不足が起こったのでしょうか。

そこから今後のマーケットの動きが見えるかもしれません。もう少し見ていきましょう。

中国は政府が電力を管理しています。胡錦濤国家主席の代から、一定の水準までに消費電力を抑制するという政策がありました。

しかし2021年8月、中国国家発展改革委員会は2021年上期の目標達成状況を発表したところ、目標からは大きく離れていたのです。

そのため中国政府が目標達成に向けて発電量を抑えたのではないかとの推測されているようです。

これが影響して2021年9月27日までに、中国本土の23社の上場企業が生産停止・減産をしていました。

また現在の習近平国家主席の環境対策も影響していると考えられます。習氏は2060年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにするという目標を発表しています。

また2022年2月に行われる北京冬季オリンピックも関係しているでしょう。大気汚染を抑制し青空で冬季オリンピックを開催したいという目論見もあると思います。

中国の主な電源力:石炭

現在の中国の主な電力源は石炭です。2020年の中国国内の発電における 石炭火力発電の割合は6−7割と、中国が発電を石炭に依存していることが分かります。

そしてその石炭の価格が今年から高騰していることも電力不足の要因の一つです。今年9月中旬での石炭価格は前年同期比の約2倍となっています。

これにより中国国内で採算が合わない発電所が火力発電を控えており、石炭の仕入れ自体も買い控えています。9月時点では中国の6つの主要発電所の石炭の在庫は約15日分程度と過去最低水準で、在庫がありません。

中国においてはオーストラリアとの関係悪化により、石炭の輸入をインドネシアに変更したことも影響しているかもしれません。

このような様々な理由から電力不足が引き起こされたとされています。政府の消費電力抑制のための政策、環境対策、石炭価格の高騰と供給先の変更などの理由が考えられます。

電力不足と海上運賃

電力不足が起きたことで、海上運賃に影響が出ましたが、今後どうなっていくのでしょうか?

中国政府は消費電力抑制をしましたが、多くの工場が止まる状況になり、脱炭素の厳しい石炭の使用を抑制する従来の方針を撤回。発電用燃料の生産を復活させ、輸入も緩和するという新たな政策を打ち出しました。

輸入はインドネシアからだけでなく、アメリカ、コロンビア、南アフリカにも及んでいます。

石炭の供給が回復し電力不足が回復すると、製造業も通常通り稼働することが出来ます。そうなると本船スペースが埋まっていくようになるでしょう。

LA港、24時間稼働へ

ここで、今後の海運市場を見ていくのにアメリカの状況を確認していきましょう。

アメリカのバイデン大統領は10月13日LA港、ロングビーチ港にて港湾を週7日、24時間稼働にすると発表しました。

それに伴い、計6社、ウォールマート、FedEx、UPS、ホームデポ、サムスン、ターゲットは夜間シフトを増やし、協力していく姿勢を見せています。

しかしワシントンポストによると、ロングビーチの港湾関係者は、24時間稼働するターミナルの数はどうなるかわからない、と発言しています。

LA港やロングビーチ港など大きな港湾には複数のターミナルがあり、今回の24時間稼働に対応するターミナル数は未定ということです。

更に、ホワイトハウスは同6社の対策強化によって、年末までのコンテナ輸送量が週当たり3,500個増えると予想していますが、正直な感想としましては全く足りないと思います。

というのも、10/14時点の沖待ちコンテナ船は62隻。船のサイズにもよりますが、大きい船だとコンテナを1-2万本積んでいます。

LA港、ロングビーチ港で予想されているコンテナ取扱量は9月で90万TEU、10月 92万TEU、11月 90万TEUです。混雑解消にはほど遠い数です。

実際、バイデン政権としても、来月すぐに始まるクリスマスシーズンの物流混乱回避は保証できないと発言しています。

まとめ

これまで、2021年国慶節前後の中国、今後のアメリカについての状況を確認してきました。

中国の電力不足で海上運賃の下落となりましたが、電力不足対策で石炭の輸入を強化し、北米では港湾が24時間稼働を始めます。

北米西岸の24時間稼働は現在の混乱を早急に回復させるものではなく、時間をかけながら貨物の目詰まりを解消していくものになるでしょう。

このことから国慶節前の運賃が下がったのはやはり一時的なものであり、来年までスペース不足は続くのではないかと思います。一旦発生した目詰まりは、そう簡単には解消しないと個人的には感じています。

混乱しているサプライチェーンの状況について引き続き情報発信をしていきたいと思います。

今回の内容は以上です。ありがとうございました。


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飯野飯野

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