海上運賃の高騰はいつまで続くのか?
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海上運賃の高騰はいつまで続くのか?

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どうもこんにちは飯野です。

今回は、現在高騰している海上運賃の市況がいつまで続くのか?というテーマでお話をしていきたいと思います。


先日、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルを読んでいたら北米の港湾関係者の間では現在のような市況は2022年まで続く見通しであるという見出しの記事がありました。

また日本の海運メディアでも同様の内容の情報をよく見かけます。

現在の海運業界の市況


それでは、まず現在の市況がどのようになっているのかをご説明します。

上海航運交易所が発表している北米向けの海上運賃は、上海からロサンゼルスまでがUSD6,000/40’東海岸のニューヨークまでだとUSD 10,000/40’を超えています。これはコロナ前の4倍以上の価格です。

そして、通常9月から北米向けのクリスマス商戦に向けたピークシーズンが始まるのですが、今年は8月に前倒しになっています。

2021年のクリスマス商戦


今年の北米のクリスマス商戦は例年とは違います。世界最大の小売アメリカのウォルマートが11月にブラック・フライデーセールを3回行うと発表したのです。

ブラック・フライデーのセールは毎年11月第4週の木曜日 Thanks Giving Dayの翌日の金曜日に開催され、アメリカでは最も活気のあるセールの一つです。

それが今年はコロナのデルタ株の影響で、密を避けるために3回に分けて行われます。ウォルマートがこのようなセールをするので他の小売も何らかの形でセール期間を増やしたり、伸ばすことが予想されます。

当初は北米向けの需要の伸びは、バイデン政権の給付金によるアメリカ経済の回復、ステイホームによる在宅ワーク用の需要からのものだと思っていました。

しかしクリスマス商戦を更に勢いづける刺激が小売側からもあったのです。

沖待ち多数、内陸の鉄道もパンク寸前


こうなると各小売では在庫を確保する必要があり、その為に通常よりも多くの発注・国際輸送が発生することになります。

その為、現在では多くのコンテナが中国に集まっていて、日本やタイにある弊社でも北米向けのコンテナやスペースが非常に取りにくい状態が続いているのです。

このクリスマス商戦に向けた輸送は通常 10月1日の中国の国慶節の前には落ち着きます。しかし国慶節後もスペース不足で送れなかった発注分の輸送があるかもしれません。


そして、現時点でロサンゼルス港での船の沖待ちは約40隻あると言われています。貨物を積んだコンテナ船が積み下ろし待ちで40隻も順番を待っているのです。


更に中国から出るコンテナが10月に落ち着いたとしてもアメリカ側でこれを捌くのに時間がかかります。現在は海上だけでなく、内陸の鉄道もパンク寸前になっている状態です。


このように北米の至る所で目詰まりが発生している状態なので、これが解消されるには数ヶ月の期間が必要になるでしょう。

2022年2月の中国旧正月


そして次のピークが2022年2月の中国の旧正月です。一般的にこの旧正月前にまた貨物出荷が集中します。

北米向けは目詰まりがこれまでに解消できていなければ、またサプライチェーンに乱れが発生することになるでしょう。

北米西岸港湾の労働協定の失効


その次のイベントが2022年7月。北米西岸港湾の労働協定の失効、改定交渉です。

前回の2014年の労働協約改定では妥結するまで、なんと9ヶ月の時間を要しました。この交渉期間は実際に港の機能が低下して、多くの貨物がエアー・カナダの西海岸・北米東岸経由で輸送をされることになったのです。


今回の労働協約のテーマの一つに「港の自動化」があります。港の自動化が導入されれば港湾労働者の仕事が減ります。

そういう意味でこの改定交渉は荒れるなと予想できるのではないでしょうか。


前回でも北米東岸向けの海上運賃は高騰しましたので、2022年7月においても同様に海上運賃の高騰が考えられます。

2022年のクリスマス商戦


そうこうしているうちに2022年9月。クリスマス商戦の輸送が始まります。

来年のこの時期にコロナの影響がどうなっているかは分かりませんが、北米西岸港湾の機能は正常でない可能性があります。もしコロナの別の変異株などが影響していたら更なる混乱が予想されます。


流石に今年のスエズ運河封鎖のような事故はないかもしれませんが、引き続き何かの問題が発生するとサプライチェーンが乱れるほど緊張した状況は続くと思われます。


このように考えると2022年いっぱいにおいても、海上運賃は上がる要素はあっても、下がる要素が少ないと個人的には思います。

海上運賃とスペースの交渉スタート


実際に日本では荷主・フォワーダー・船会社とで2022年の海上運賃、スペースの交渉が早くも始まりました。通常では11月や12月ですが今年は9月からという異例の早さです。

この交渉では運賃交渉というより、スペースの安定供給の交渉が重要視されているようです。

まとめ

今回ご説明した内容をご自身でも改めてご確認頂き、来年以降のサプライチェーンにおいて自分で出来ることの準備を進めることが適切なのかなと思います。


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飯野飯野

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