どうもこんにちは飯野です。
今日は、CO2の回収についてお話していきたいと思います。
海事新聞で「川崎汽船・三菱造船・日本海事協会が船上CO2回収に世界で初めて成功」という記事があったので、これについて考察を交えて話していきたいと思います。
2021年10月25日イーノさんの物流ラジオ
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海上でのCO2回収
陸上でのCO2回収はすでに設備等ができていますが、海上でCO2を回収したのは世界初です。
10月20日に、川崎汽船と三菱造船は日本海事協会(NK)と共同で、船上でのCO2(二酸化炭素)分離・回収の実証試験に成功したと発表しました。
石炭船に小型デモプラントを搭載しましたが、このデモプラントは陸上プラント用を洋上向けに転用したものです。
これのエンジンの排ガスから純度99・9%のCO2を分離・回収し、今後、商用実機に向けた課題整理と研究開発に力を入れていくとのことです。
CCUSとCCS
脱炭素ということで、CO2を出さないことに注目されてきましたが、実際は回収し、保存されていたんですね。
環境省では現在、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS: Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)に力を入れています。
1992年、アムステルダムで開催された第1回CO2回収に関する国際会議において、既にCO2回収の動きはありました。
2005年以降、CCS(CO2の回収・貯留)(Carbon dioxide Capture and Storage)技術が現実味を帯びていきます。
分離・回収のやり方
CO2は水に溶けるので、特殊な液体に入れて加熱して分離・回収する方法、また、最近では固体吸収剤に閉じ込める方法も出てきています。
三菱重工がCO2の分離・回収設備で有名で、世界14カ所で回収装置を設置、7割超のシェアを占めています。
貯蔵のやりかた
S(Storage)はどこに貯留するのかというと、現在は地中に入れています。
回収したCO2をパイプラインなどで輸送し、圧縮して地下の貯留層にとじ込めるのが一般的です。
石油や地下水を長期間封じ込めていたような安定した地層ならば、CO2の隔離も長期間可能なはずだという考え方があります。
けれど、貯留場所にも限りがあり、現在のCO2排出量だと世界で65年以上~100年分のCO2の貯留可能と言われています。
日本だと北海道の苫小牧にCO2の回収と滞留の施設があります。
CO2の液体化
他にはCO2を液化して海上輸送する方法もあります。
CO2を回収、貯留地までパイプで送って、圧入するにはCO2、1トン当たり30USDほどかかります。
また、先ほど話したように貯留する地域(地層)は限られています。
回収地点から貯留地までの距離が大きく離れる場合は、パイプラインより海上輸送の方がコストが低くなることもあるんですね。
液化CO2船への注目
液化CO2船は世界で5隻しかありません。全てノルウェーの海運会社ラルビック・シッピングが船舶管理しています。
もともと飲料ガスなど向けに運航されていたものですが、最近では、CCUS・CCSの事業化が進む中で世界的に注目が集まっています。
商船三井はラルビックに出資し、液化CO2輸送事業に参入し、国内でも液化CO2船の開発を進めています。
コストの問題
CO2の回収地点から貯留地までの距離が100~200キロメートル程度離れると、海上輸送のコストはパイプラインを下回り、安くなります。
世界のCCSの平均コストはCO2を1トンあたり、地中まで入れるまでに80USDから100USD程度かかります。
その内訳として60USDからUSD程度は分離・回収工程が占め、この工程のコストダウンが急務とされております。これに関しては、世界中で国をあげて取り組んでおり、日本は環境省が行っています。
分離・回収も技術を進めてコストダウンを進めていて、日本では今、2050年までに1トン当たり10USDを目指しています。
CO2の有効活用
CO2の有効活用も(CCUS)も重要です。
近年では、技術も発展したため、CCS(回収・貯蔵)だけでなく、有効活用していこうという動きがあります。
活用法としては、ビニールハウスで植物・野菜にCO2をあげたり、基礎化学品(メタン、メタノール、オレフィンなど)への変換などがあります。
メタノールは船舶燃料としても注目されていて、大手船会社Measkも注目し、メタノール焚きの船を作っています。
CO2削減への動き
EUは2030年のCO2排出削減量を従来の1990年比40%減から更に55%減に引き上げる法律を承認しました。
今後、CO2の削減が一層強まっていきます。
目標を達成するため、企業やベンチャーキャピタルなどの投資家は、CCUSを手掛ける企業への出資や提携に乗り出していて、2021年のCCUS企業の資金調達額は前年比3倍、11億ドルに達する見通しです。
脱炭素について、現在回収・貯留が行われていますが、留めておくところにも限界があります。
最初から出さないことももちろんですが、冒頭で申し上げたように、海上での回収にも成功したので、今後は回収についても注目だと思います。
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