本日のテーマは海上輸送にて来年の運賃とスペースの交渉が始まったという内容でお届けします。
通常、海上輸送での船会社に対して翌年のスペースや運賃交渉は11月〜12月ぐらいです。しかし、それが今年は9月から始まるという異例の早さでの交渉開始です。
今年のサプライチェーンは大きな混乱があり、来年も同じく乱れることが予想されているからでしょう。
2021年9月10日 イーノさんの物流ラジオ
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契約交渉が早い理由
主に契約では大手荷主やフォワーダーが来年のBooking量を船会社に伝えて、海上運賃とスペースを交渉します。2022年では海上運賃というより、スペース交渉の方が優先されているようです。
現在の世界各地の港や内陸部のコンテナの目詰まりはすぐに解消されるものではありませんし、2022年7月には北米西岸の労働協約が失効されて再交渉が始まります。来年も北米向けの海上輸送ではスペースが逼迫する可能性が高いのです。
運賃交渉とスペース交渉
船会社との交渉における海上運賃の種類についてご説明をします。これらには2種類があり、1つがネームドアカウント、もう1つがFAKレートです。
ネームドアカウント
ネームドアカウントは特定荷主の代理店としてのフォワーダーが運賃を得るものです。特定の荷主用の運賃なので他の荷主には使用できません。
FAKレート
一方でFAKレートはFright All Kindsといい、1ヶ月〜3ヶ月の固定レートとご理解してもらえればいいと思います。昨今の状態では3ヶ月のレートを固定する条件は難しいだけでなく、FAKレート自体が使用出来ない場合もあります。
プレミアムレート
FAKレートが使用出来ない場合、またネームドアカウント以外の荷主への海上運賃はプレミアムレートという特別運賃をしようする形になります。通常の海上運賃より更に高い費用を払えばスペースを確保するというものです。
プレミアムレートしか使えないとなると、荷主からすると安定したサプライチェーンを確保するために輸送費用が高額になってしまうので、前年にしっかりと契約をしておくのです。
2023年以降の供給過多の可能性
そして、今回の契約で「複数年契約」と意外な提案が一部の荷主からあったようです。
現在 船会社は昨今の好景気の影響もあり、多くのコンテナ船を発注しています。
・2022年竣工の新造コンテナ船:90万6,000TEU
・2023年以降竣工の新造コンテナ船:396万8,000TEU
このように2023年以降は供給過多になる可能性がある為、荷主にとっては複数年契約は不利になる可能性もあるのです。しかし私 個人的にはそこまでの供給過多にはならないと考えています。
スエズブームからの教訓
1956年頃にスエズブームという船会社にとって最大の好景気を迎える時期がありました。
スエズブームとはスエズ運河の所有権をめぐって第二次中東戦争が勃発し、スエズ運河が1年閉鎖されました。その為 多くの輸送船は南アフリカの喜望峰をまわることを余儀なくされたので、海上運賃が高騰したのです。
海上運賃の高騰によって大きく利益を得た船会社は新造船に投資したものの、スエズ運河の再開通が始まると供給過多ととなり海運市場には大きな不況が訪れました。
今回もそのような供給過多への懸念がありますが、過去の失敗から学んだ船会社は環境保護に対応した船腹の利用をするためと供給量をコントロールすると個人的には思っています。
まとめ
とはいえ2022年も海上運賃は高い水準が続くと予想して大手荷主やフォワーダーも含めて交渉をしているようなので、来年のサプライチェーンの乱れが予想されます。
私個人的にも来年も引き続き忙しい一年が続くのかと準備を進めねばと思っています。
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