2021年9月物流ニュース!
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どうもこんにちは飯野です。
今回は2021年9月の物流や海運に関するニュースをお届けします。
今年の9月は過去に例がないほどサプライチェーンに乱れが生じていることから、どのように海運市場に変化があったのかを中心にお届けしていきたいと思います。
それでは、いってみましょう。
北米西岸沖待ち悪化。コンテナ船70隻を超える日も
北米西岸のロサンゼルス港、ロングビーチ港の混雑が8月以降更に悪化し、港で沖待ちしている船が70隻を超える日も発生しました。
沖待ちの平均日数は9日。一部の船では8月末から沖待ちしているものの、9月になっても接岸できない船も少なくない様子です。
これまで沖待ち船の推移は、年明けから2月にかけて顕著だったものの、4月以降縮小され、5月6月には一桁まで減少していました。
しかし夏場の繁忙期やコロナ感染者の拡大で荷役作業が滞り、70隻を超える沖待ちが発生しました。
コンテナ運賃、8航路で過去最高値を記録
アジア発のコンテナ運賃が軒並み値上がりしています。
上海航運交易所が発表した9月10日付けの運賃は、上海発13航路すべてが前週に比べて値上がりをし、また13航路中8航路が過去最高値をつけました。
9月10日時点の北米東岸向け40フィートは1万1,731ドル、北米西岸向けは6,322ドルといずれも過去最高値となっています。
一方で欧州航路では北欧州向け20フィートが7,491ドル、地中海向けが7,365ドル。欧州航路でも過去最高値となっています。
そして南北航路では、西アフリカ向けが20フィートあたり8,359ドル、南米東岸向けが1万148ドルです。
このように欧米など主要航路では最高値をつけていますが、一部では頭打ち感が見えているという見解もあるようです。
コンテナ船チャーター料(用船料)高騰、4,400TEU型9.8万ドル。短期契約が困難に
コンテナ用船市場が高騰しています。4,400TEU型は9月10日時点での日建て用船料は9万8,500ドルとなり、半年から1年の短期契約だと10万ドルを超えています。
船主は高い用船料と長い用船期間を船社であるオペレーターに要求しています。
その為、短期用船での契約期間は船腹が調達出来ても、契約更新の際に交渉がまとまらなければ、オペレーターはサービスが維持出来なくなる可能性もあるようです。
4,400TEU型の用船料はコロナ以前では1日あたり1万ドルが上限でした。
しかし昨年夏頃から一気に上昇し、11月には2万ドルを超え、その後も上昇を続け、9万8,500ドルになっています。
CMA-CGM コンテナ運賃スポット値上げ停止。来年2月まで
仏船社CMA-CGMは9日、全てのスポットコンテナ運賃の引き上げを停止すると発表しました。
期間は9月から2022年2月1日までとし、顧客との関係性を維持するためとのことです。
運賃の維持の対象はCMA-CMGだけに限らず、CNC,APL,ANL,コンテナシップス、メルコスラインなどグループ会社全てに及びます。
今年に入ってから、世界のコンテナ輸送は需要の逼迫によりスポット運賃の上昇が続いていますが、このような発表は異例です。
基幹航路のコンテナ運賃はコロナ前と比べて2~3倍になり、荷主などを中心に強い不満が高まっています。
また各国当局もコンテナ船社への監視を強めているため、今回はそうした不満に配慮したのではと見られています。
2022年度のコンテナ船社と荷主の運賃交渉、活発化。スペース確保急ぐ
主要コンテナ船社と日系荷主の2022年度運賃交渉が早くも動き出しています。
現状のサプライチェーンの混乱が来年に及ぶことを鑑み、荷主がスペース確保に追われていることが影響しています。
ある日系大手メーカーは9月に入り、22年度の輸送契約の説明会を開催したとのことです。
例年だと11月、一般的には12月から1月に行われていますが、今年の実施は異例なほど早いです。
これだけ前倒しするのは今年のようなスペース不足を避けたいという理由があります。
一部の荷主は船会社にスペースの安定供給のために複数年契約を求める声もでているようです。
イケア、自社でコンテナ購入、コンテナ船チャーター。サプライチェーンの混乱改善に動く
欧州家具大手イケアは、世界的なサプライチェーンの混乱に対応するために自社で海上コンテナを購入し、船舶のチャーターを行っているとのことです。
既に北米流通大手ウォルマートやホームデポも船舶のチャーターに着手していますが、他の大手荷主も同様の手段をとる可能性があります。
イケアは以前からコンテナ購入を行っていましたが、船舶チャーターに乗り出したのが3月のスエズ運河で「EVER GIVEN」の座礁が後押ししました。
この船にはイケアのコンテナが100本搭載されており、この座礁により輸送が大幅に遅延したとのことです。
その後コンテナ購入やチャーター船により、海上輸送の混乱は改善したと発表しています。
ウォルマート、2021年クリスマス商戦はセール3回
北米流通大手ウォルマートは2021年のブラックフライデーのセールを3回行うことを発表しました。
コロナの感染状況から11月中に3回のセールを開催することで人流を抑制し感染拡大に配慮した模様です。
例年、北米のブラックフライデーセールは11月第4週の金曜日からです。
世界の輸送状況が逼迫している中、セールのスケジュールが前倒しになる上、複数のセールに多量の在庫確保は一層のサプライチェーンの混乱を引き起こす引き金となっています。
ウォルマート、クリスマス商戦に向け2万人正規雇用
ウォルマートは北米のサプライチェーンオペレーターに2万人を正規採用すると決定しました。
通常であればクリスマス商戦には季節労働者の採用となりますが、今年は労働者の獲得競争が過熱することが予想され、またサプライチェーンのオペレーション力の確保に向けての対策と見られています。
今回採用されるのはディストリビューションセンター、フルフィルメントセンター、輸送オフィス、オーダーピッカー、貨物の受け取り人、フォークリフトオペレーターなど、オフィス業務や倉庫業務の職種です。
平均時給は20.27ドル、コロナの予防接種150ドルのボーナス、ホリデーシーズンのボーナスなど待遇を手厚くし、人材確保に乗り出しています。
解説コーナー
それでは9月の海運の流れを解説していきましょう。一般的にコンテナ輸送では10月1日の中国国慶節の前までが年内のピークシーズンとされています。
しかし、現場で働いている私からしても9月末の現在においてはピークが収束に向かっている感じが全くしません。
引き続き本船のスペースが取りにくい、海上運賃は10月上旬も高い状態です。
それには今回のニュースで説明したように理由があります。最後のウォルマートのニュースで紹介したように、北米では小売側からも複数のセールで消費者に刺激がありました。
当初はバイデン政権による給付金やワクチン普及による、北米の景気回復が理由だと思っていたのですが、ウォルマートのような超大手小売がブラックフライデーセールを3回もやるとなると 各店舗の在庫確保は凄いことになります。
ウォルマートは自社で船をチャーターして貨物輸送をしていますが、ウォルマート以外の小売もセールに力を入れ 北米向けの貨物需要が伸びていると考えられます。
またウォルマートは自社のサプライチェーンの安定を図る為に、季節労働者ではなく正規雇用という形で20,000人を雇用しました。
北米市場の消費者需要が伸びる中で、季節労働者の賃金も上がり傾向にあります。
ウォルマートとしてはこの市場の加熱が今年だけのものではないと考えているからこそ、正規雇用という形にしたんだと思います。
このように消費者需要、コンテナ船の需要の高まりから用船料がコロナ前に比べて10倍になっているというニュースがありました。
船会社も自社で保有している船もあれば、船主から借りている船もあります。船会社の用船の仕入れ値自体が大きく上がっているので、海上運賃も大きく値上がることになります。
コンテナ船1隻の価格はサイズにもよりますが100〜200億円という大きなもので、船のオーナーはこのような大きな投資をしているのを忘れてはいけません。
この海運業界の好景気がいつまで続くかが分からない状況でもあるので、需要が高い時に価格が高騰するのは、この資本主義において一般的な流れだと思います。
とはいえ、特に北米向けのスポット運賃が高騰しているのでCMA-CGMはスポット運賃の値上げを来年の2月までストップすると発表しました。
他の船会社がこれに同調するかは分かりませんが、価格の天井が見えたような気がします。
日本においては大手荷主と船会社、フォワーダーの交渉が早くもスタートしました。ニュースによると運賃よりスペースを重視した交渉であったようです。
このことから、業界関係者の間ではこのコンテナ不足・スペース不足は来年まで続くと見込んでいます。私自身も来年いっぱいまでは高い水準であることが続くと思っております。
これに関する詳しいお話は別の動画にて解説をしていますので概要欄にリンクを貼っておきます。
まとめ
今回の物流ニュースはいかがだったでしょうか。もし参考になったという場合はチャンネル登録、動画のシェアなどよろしくお願いします。
今回参考にしたニュースのソースは概要欄にリンクを張っておりますので、詳しくはそちらもご覧ください。
現場からは以上です!ありがとうございました。
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