貿易取引において重要なのはリスク管理とコストです。筆者が輸入する時に頻繁に使う貿易条件はFOBなのですが、国によって貿易条件を変えております。
輸入の場合は慣れている国だとFOB、そうでない場合はCFR。使い分けが肝心です。今回は輸出者、輸入者のそれぞれの立場からインコタームズのFOBについて見ていく事にしましょう。
FOBについて動画で解説
貿易が得意な弊社の立場からFOBをどのようにして使うのかを含めて解説をしています。是非ご覧ください。
インコタームズ FOBとは
FOBは日本語では本船渡し条件、または甲板渡し条件とも言います。
輸出地の港に停泊する船舶の甲板において費用や危険負担の責任が移転する取引条件のことです。
FOBは英語のFree On Board の略称でこの場合のBoardは船舶の甲板を指します。ですからFOBとは船舶の甲板において、輸出者が責任から自由になる(責任が輸入者へ移転する)という意味になります。
なんか豆知識みたいだよね。
船積書類などには、「FOB TOKYO」のように、FOBの後には輸出港の名前が表記されます。「FOB TOKYO」であれば、「東京港に停泊する船舶の甲板において、責任が輸出者から輸入者に移転する」という意味になります。
輸出港の船舶上で責任が輸出者から輸入者へと移転するので輸出者にとってはリスクが比較的少なく、輸入者にとってはEXWよりは責任範囲が狭いものの一定以上の取引経験やリスクヘッジが求められる条件と言えるでしょう。
FOBにおける貨物の引渡し場所、費用負担・危険負担の分岐点
FOBでは費用や危険負担の責任は船舶の甲板に貨物が接地(タッチダウン)した時点で輸出者から輸入者に移転することになっています。
貨物が船舶に積載されてからは輸入者が責任を負いますが、貨物が積み込まれる船の予約については実際には輸出者が行うこともあります。
輸出側と輸入側のフォワーダーでちゃんとやりとりして本船の予約をしてるんや。
ちなみに、最新版であるインコタームズ2010において長年にわたり、FOB、CFR、CIFの各条件で危険負担の分岐点として想定されていた「本船の手すり (Ship’s Rail)」の文言が削除され、物品の危険は「物品が本船の船上に置かれた(On board)」時に売主から買主に移転するとされました。
ガントリークレーンの恐怖
コンテナを使用する海上輸送の場合、コンテナをターミナルから船舶上に積み込むのは実際には港湾業者や船会社が行う業務です。
そのため輸出者は本船への積み込み作業を自社でコントロールすることができません。
なのでFOB条件ではガントリークレーンを使った本船への積み込みの間の責任も輸出者にあるとされるので積み込み時のリスクも考慮に入れなければいけません。
ガントリーの操縦士が下手だった場合、コンテナに穴が開く時があるからね。。
これに対しFCA条件では貨物が運送人の管理下にあるコンテナヤード(CY)で引き渡され、輸入者指定の運送人の管理下に置かれた時に貨物の引き渡しが完了し危険負担が輸入者に移転します。
港湾の荷役とガントリーだけはどうにもならん。。
輸出者側から見たFOB
FOBは輸出者側は自国の港までの責任を持てばその後の船舶輸送や輸入地での輸送は輸入者に委ねることができるので、輸出者側から見たら比較的責任負担の軽い取引条件だと言えます。
輸送中のトラック事故を気を付けたらええだけやしな。
輸出者としてはリスクを避けるためには、コンテナ輸送の場合はコンテナターミナルなどの運送人の施設で責任が移転するFCA条件をFOB条件の代わりに提案するのが望ましいとされています。
でも輸出側のフォワーダーの立場としたら輸出のFOBって魅力がないんだよね。。
輸入者側から見たFOB
輸入者にとっては特定の輸入国から頻繁に輸入しているのであれば海上運賃の値下げ交渉をフォワーダーにする事が出来るのでFOB取引のメリットがあるでしょう。
一方で輸出者のほうが大量の貨物を輸出しているようなメーカーであればFOBではなくC&F取引の方が良いでしょう。何事も取扱量が多く、慣れているほうが手配するほうがスムーズですしコストメリットもあります。
FOBは輸入者に決定権があるから輸入側で大体話が決まるんや。
ここで取引するフォワーダーがその輸出国からの物流に強いかどうかがポイントです。上述していますが頻繁に輸入をしているのであれば選択肢も多いでしょうしスムーズな取引が出来ます。
そうでなければ他の取引条件での交渉も検討した方が良いでしょう。
まとめ
今回はFOBについて詳しく見てきました。FOB条件は輸出港に停泊する船の甲板上で責任が移転します。
輸出者、輸入者どちらの立場の場合でも見積もりや取引にあたってFOB条件について正確に理解しておくことは重要です。FOB条件での取引を考える際はそのメリットやリスクについて十分に検討した上で契約を結びましょう。
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