貿易での商取引で意識することの1つに関税があります。これにより製品の代金が関税により上がってしまい、輸入後に価格面での競争力がなくなってしまいます。
それを避けるために特定原産地証明書を使うのですが、これにより協定を結んでいる国同士であれば特恵税率という関税が無税・減税というメリットあります。
今回はこの特定原産地証明書の取得方法する方法について解説したいと思います。
ちなみに原産地証明には「特定原産地証明」と原産地を証明することのみを目的とした「一般原産地証明」があるんだ。
関連するブログへのリンクを貼っておきますのでご一読いただければ理解がより深まると思います。
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一般の原産地証明書と特定原産地証明書の違い
まずは原産地証明書の違いについてお話したいと思います。一般に原産地証明書といわれるものは貨物の原産地を証明するためのもので、輸入国の法律や規則に基づく要請や契約や信用状で指定がある場合に提出します。
日本では「各地の商工会議所」が発行機関とされてるねん。
一方、今回のテーマである特定原産地証明書は日本が締約する「EPA経済連携協定」に基づくものです。協定によって決められた特恵関税の適用を目的としているものです。
これは「日本商工会議所」が唯一の指定発給機関だよ。
各地の商工会議所ではありません。ここが違うポイントとして重要なところです。
・一般の原産地証明書:各地の商工会議所
・特定原産地証明書:日本商工会議所
各地の商工会議所と、日本商工会議所
発行機関が「各地の商工会議所」か「日本商工会議所」か、字面で見ると大して違いが無いように思えてきますが実際は全く異なる機関です。
もし一般の原産地証明書の取得のために各地の商工会議所で貿易登録をしていたとしても、特定原産地証明書を取得するためには改めて日本商工会議所にも貿易登録をしなければなりません。
例えば日本商工会議所の名古屋事務所が名古屋商工会議所の中にあるように両者の距離感が近いので勘違いされやすいのですが、日本商工会議所への貿易登録が済んでいなければ発行は決して叶いません。
「勘違いあるある」やろうな。。
特定原産地証明書の取得が必要となりそうな場合には必ず事前に貿易登録をしておくように忘れないでください。
EPAの規定などを確認する
日本商工会議所への貿易登録を済ませ、輸出しようとする産品のEPA税率の有無と税率を確認しします。そして、それぞれのEPAに定められる原産地規則に基づいた原産資格があることをちゃんと確認できたら日本商工会議所に判定審査を依頼します。
ちなみにこのように、「産品がそれぞれEPAに定められる原産地規則等を満たしている」とその産品は特定原産品と呼ばれます。
申請は窓口ではなくインターネットで
原産品の判定を依頼するためにはオンラインの専用システム「特定原産地証明書発給システム」から「原産品判定依頼書」を入力し日本商工会議所に提出をします。
特定原産地証明書関連の申請は一般の原産地証明書とは違って、窓口申請ではなくインターネットでの申請ができるのです!これはとても便利ですね。
日本商工会議所が原産品判定に関して必要な情報を受理してから原産品判定番号を付与するまでの期間は、原則3営業日かかります。なるべく早く済ませるようにしましょう。
特定原産地証明書の取得
ここまで完了しましたら後は輸出する産品に対する特定原産地証明書を取得します。こちらも原産品判定の依頼と同様オンラインシステムから申請可能です。
日本商工会議所が証明書発給に必要な情報を受理してから審査結果を通知するまでの期間は、原則2営業日かかります。
何かと日にちのかかる申請ですので余裕をもって準備してください。
発給手数料
発給時には交付と引き換えに発給手数料を納付する必要があります。基本料は申請1件につき2,000円、加算額は1品あたり500円です。
原産品判定番号の使用が20回を超えると21回目から50円になります。
・2,500円(1回目~20回目)
・2,050円(21回目以降)
発給審査が完了しますとシステムから発給申請一覧で発給手数料を確認することができます。
納付方法
発給手数料は原則、発給事務所の窓口で交付と引き換えに納付します。こちらはチケット制ではなく現金で支払うことができます。事務所が遠い場合は銀行振り込みも認められていますし、月当たりの件数か金額が多い場合は後日振り込み払いとすることもできます。
ご自分の都合に合わせて確認してみて下さい。
特定原産地証明書の受け取り
原則通り手数料を窓口で現金払いする場合にはシステムから「引換書・受領書」を印刷し、窓口へ出向いて引換書の提出とともに現金で納付すれば完了です。
発給申請は輸出者しかできませんが引換は代理でも問題ありません。
フォワーダーに依頼するのも選択肢の一つだよ。
多少の手数料が取られるとは思いますがわざわざ足を運ぶ手間が減りますし、そのまま現地への発送も依頼してしまえばより楽かつタイムリーな手配になります。
申請のタイミング
申請は船積みが確定してから船積みまでが原則とされています。船積みが確定というのは曖昧な表現ですがおススメはBLの内容を確認してからです。
というのも、原産地証明書にはBL番号を入力することこそありませんが船積み地や便名などの情報も入力しなければならないからです。
スペルミスがあるとダメだしね!
お客さんがB/L内容をコンファームしてから申請しとるで
特定原産地証明書の取得には例外もあり
ここでざっとお話しましたことは特定原産地証明書の一般的な流れです。実際は協定ごとに異なる原産地規則がありますのでそれぞれの協定に基づく形で発給されます。
例えば、日シンガポール協定に基づく特定原産地証明書のうち、ビール等4品目に対する証明書に限り一般の原産地証明書と同じように各地の商工会議所で発行されます。
また日オーストラリア協定は自己申告制度が導入されていますので、輸出者、生産者さらには輸入者が原産品申告書を作成することが可能です。原産品申告書は税関様式に則ったフォームであれば問題ないので、この場合は特定原産地証明書を取得する必要がありません。
代わりに原産品明細書が必要だったり事前教示が勧められたりしていますので、一概にどちらが楽と言えるものではなさそうですが輸出者輸入者の双方にとってメリットのある方法を選ぶことができます。
まとめ
特定原産地証明書の取得の流れにつきましてご理解いただけましたでしょうか。
EPA自体、この数年で始まったものですので、これからまた規則が変わることは十分に予想されます。特定原産地証明書の取得が必要な方はいつも最新の情報をチェックしておくようにされると良いでしょう。
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