一般的な海上輸送では20フィートコンテナや40フィートコンテナで輸送するFCL、また他社の貨物と一緒に運ぶ混載便(LCL)があります。FCLは自社の貨物だけでコンテナをいっぱいに出来る場合に使う輸送方法です。
今回、あるお客様がLCLの問題を発生させてしまい、また別のお客様も同じ問題を発生させようとしていた経緯がありました。
毎回LCLで運んでると損益分岐点を意識しないのかもね。
今回は注意喚起の意味も込めてFCLとLCLの違いを説明した上で、LCLを使う際の注意点を解説します。
FCLとLCLの違い
まず名前の違いから見てみましょう。
・FCL:Full Container Load
・LCL:Less Than Container Load
FCLはコンテナ一杯に貨物を積みますよ。
LCLはフルコンテナに満たないですよ。
というのが直訳ですが、貿易関係者以外は特に正式名称を覚える必要はないかと思います。
FCL コンテナ輸送
コンテナに貨物を詰め込むにあたり、まずコンテナの内寸と最大積載重量を把握しましょう。これを理解していると効率的な貨物の輸送が出来ます。
コンテナのサイズ(内寸)
20フィートコンテナ: 2.3m(幅) x 5.7m(縦)x 2.4m(高さ)
40フィートコンテナ: 2.3m(幅)x 12m(縦)x 2.4m(高さ)
40フィートHC(ハイキューブ):2.3m(幅)x 12m(縦)x 2.7m(高さ)
注:船会社によってコンテナの内寸が若干異なる事があります。
コンテナの最大積載可能重量
20’, 40’, 40’HC: 約25ton
重さに関しては20フィートであれ、40フィート(HC含む)であれ、同じ25tonが最大となります。40フィートだから50tonまで積載可能かというとそうではありません。
ここ重要ね!重い貨物の取り扱いは本当に危険だから!
これはとても重たい貨物を船に乗せる時や貨物の乗ったコンテナをトレーラー等で移動させる時に危険が伴う為、重量の規制が定められているからです。
こんな感じでコンテナを吊り上げるんや。重すぎるとクレーンも破損するしな。
注:船社によって最大積載重量の許容重量が違う場合がありますが、25tとしている会社が多いです。
LCL 混載輸送
一方で20フィートや40フィートコンテナ1本を埋めることが出来ない貨物量の時に利用するのがLCLです。
LCLの場合は1RT(Revenue Ton)が最低積載ボリュームとなり、1RT以下でもその分の料金が請求されます。
RTとは1CBM = 1Tonがイコールという条件でどちらか大きい方の単位を採用するものです。
この公式が超大切!「大きさ」と「重さ」を比べる為のモノサシなんだ。
FCLとLCLのローカルチャージの違い
FLCであれLCLであれローカルチャージという港を使用する際に発生する諸費用があります。
ここでの注意点としてFLCとLCLのローカルチャージが全く別の計算方法を取られるということです。
FCLの港費用
THC (Terminal Handling Charge):ターミナル・ハンドリング・チャージという港内でコンテナを動かす費用があります。
20’フィートで○円、40フィートで○円という固定された費用です。
例えば、
・THC – 20フィート: JPY 35,000/20’
・THC – 40フィート: JPY 49,000/40’
輸出側と輸入側の両方で発生するからね。
船会社によってTHCの価格は違いますので詳しくは各船会社のホームページをご確認下さい。
LCLの港費用
LCLでもFLCと同様にTHCがあり、更にLCLではCFS(Container Freight Station): コンテナ・フレート・ステーションという港や倉庫でコンテナに貨物を積み下ろしする場所の費用が発生します。
FCLのコンテナ輸送をする時はこのCFSは発生せーへんよ。
LCLのTHCとCFSチャージは固定の金額ではなくRTの大きさによって変わります。
例えば、一般的な日本側の港費用は以下の通りです。
・THC – JPY 1,500/RT
・CFS – JPY 3,980/RT
もし5CBM(2ton)の貨物をLCLで輸送した場合の港の費用は以下のようになります。
・THC – JPY 1,500 x 5 = JPY 7,500
・CFS – JPY 3,980 x 5 = JPY 19,900
FLCとLCLの損益分岐点
FLCかLCLか、どちらで輸送した方が価格メリットがあるのか?
ある一定のボリュームを超えた時点でLCLよりFCLで輸送した方がメリットが出るのですが、その損益分岐点はフォワーダーが提示する費用によって異なります。
一概にこれ以上はFCLとかこれ以下はLCLとかは言えないんだよね。。
海上運賃だけを見てはいけない
ここが大きなポイントなのですが、損益分岐点を見る時に海上運賃だけを見てはいけません。
例えば、以下の条件の場合 FLCかLCLかどちらがメリットがあるかを考えてみましょう。
条件:貨物サイズ・重量・数量
貨物ボリューム: 1.1m x 1.1m x 1.0m/パレット(1.21CBM/パレット)
貨物数量:10パレット
貨物重量:500kg/パレット
トータルボリューム:12.1CBM
トータルウェイト: 5ton
条件:海上運賃
FCL:USD 300/20’ all in
LCL:USD10/CBM
条件:日本の港費用
FCL : THC – JPY 35,000/20’
LCL:
THC – JPY 1,500/RT
CFS – JPY 3,980/RT
答え
the answer is ・・・
FCLの諸費用
・海上運賃:USD300
・港の費用:JPY 35,000
為替:USD 1 = JPY100として
・合計:JPY 30,000 + JPY 35,000 = JPY 65,000
LCLの諸費用
・海上運賃:USD 10 x 12.1CBM = USD 121
・港の費用
THC: JPY 1,500 x 12.1CBM = JPY 18,150
CFS: JPY 3,980 x 12.1CBM = JPY 48,158
為替:USD 1 = JPY 100として
・合計:JPY 12,100 + JPY 18,150 + JPY 48,158 = JPY 78,408
海上運賃だけを見るとLCLの方がメリットがありますよね?しかし、港の費用を合わせて見てみると、FLCの方が価格メリットがある事が分かります。
でもフォワーダーが海上運賃をUSD500にしてたら、この条件だとLCLの方がメリット出るわな。
だからフォワーダーの見積もり条件によるんだ。。
インコタームズに注意する
インコタームズとは輸送費用の取引条件でして、EXW, C&F, CIF, FOB, DDU, DDPなどがあります。詳しくはこちらに記載しています。
貿易用語で最初の関門とは何でしょうか。私はインコタームズだと思います。CFRやEXWなど英単語3文字で表現されるインコタームズは何と11種類もあります。 でもご安心ください。ぶっちゃけフォワーダー歴8年の筆者も11種類の …
CIFやCRFの場合に特に注意が必要
CIFでは輸出者側は輸出側の国内輸送費用と海上運賃までしか負担しません。LCLの輸送の時に気をつけなければいけないのは「輸入地側の港の費用」です。
輸出者がFCLとLCLの損益分岐点を理解していないと、海上運賃の安いLCLで運ぶ事があったりします。
クレームが発生した件
弊社のお客様(輸出者)は別の物流業者を使って日本向けに通常 20パレットをFCLで送っていたけれども、ボリュームが減ったからと言って14パレットをLCLで輸送手配してしまいました。
14パレットを1CBM/パレットの14CBMで単純計算しても日本側のTHCとCFSが確実に20’のTHCより高くなってしまうわけです。
FCL港費用 – THC: JPY 35,000/20’
LCL港費用 – THC: JPY 1,500 x 14 + CFS: JPY 3,980 x 14 = JPY 76,720
輸入側から見たらいつも固定のローカルチャージがドーンと上がるわけなので、なんで??となるんだ。
この時のインコタームズがCIFで日本の港費用は日本側が支払わなければいけません。輸入者側からいつもの倍以上の港の費用がかかったとのことでクレームになった事例があります。
これはその別の物流業者のミスでもあります。14パレットのものがLCLでBookingされた時点でお客様に確認をしなければいけません。
プロからしたら14パレットでLCLだと大丈夫ですか?と疑うものです。
まとめ
FLCとLCLでは損益分岐点がありますがそれはフォワーダーの見積もり次第です。
でも1-5パレットくらいであればLCLで輸送する方がメリットがあるでしょう。※貨物の「高さ」ももちろん関係しますが。
そして10パレット近くになると一般的にはFCL(20’)の方がメリットがあると予想出来ます。
輸出者側と輸入者側で支払う項目が異なるのでFLCをLCLに変更するときはインコタームズと港の諸経費も含めて事前に確認をしておきましょう。
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