海上輸送のモノ・カミ・カネの流れについて!
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今回は輸出業務について解説したいと思います。国際輸送において、「モノ」「カミ」「カネ」の流れを理解することは必須です。
流れをざっくり説明すると、契約書や船積関連の『カミ』でのやり取りがはじめにあり、『モノ』を出荷し、『カネ』を受け取る、というもの。
ですがこれだと分かりにくいかもしれませんので、今回の動画で、わかりやすく説明していきます。
なお、今回の「カネ」の流れは「L/C決済」としています。L/C決済についての詳しい動画は以前に制作しましたので概要欄にリンクを貼っておきます。
「モノ」の流れ
最初に、「モノ」すなわち「商品」の流れを解説します。
輸送方法は海上と航空がありますが、一般的に国際輸送の9割が海上輸送です。
海上輸送のメリットとして、「コストが安い」「大型荷物や大量の商品を出荷する際に便利」という2点が挙げられています。
一方で、「時間がかかる」「申告書類のチェックが厳しい」といったデメリットもあります。
そのため、輸送方法を海上にするか航空にするかは、出荷する商品内容やコスト面などを輸出者と輸入者で話し合って決められます。
今回は、海上輸送について説明していきますね。
工場~保税地域~輸出
商品が輸出者の工場で生産・梱包後、コンテナやトラックに荷積みされCYやCFSなどの保税地域へ運ばれていきます。
運ぶ際の責任の所在や運賃は、契約時のインコタームズで決められます。
インコタームズとは、貿易を行う上で輸出者と輸入者との間の責任範囲と費用範囲を定める貿易条件のこと。
2021年現在は「インコタームズ 2020」が使われています。
例えば貿易条件がEXWの場合、輸出者が自社工場で荷物を輸入者に引き渡した時点で、全ての責任は輸入者側に移ります。そのため、工場から保税地域までの間に商品に損傷が発生すると、責任は輸入者側の負担になります。
保税地域へ運ばれた商品は、税関から輸出許可が下りた後に搬出され船積み手続きが進められます。
保税地域について
輸出に関する保税地域について簡単に説明します。
商品がFCL貨物の場合は、CY(コンテナ・ヤード)から搬出され、ガントリークレーンにて本船に積み込まれます。
LCL貨物(コンテナ1単位に満たない小口貨物)の場合は、CFS(コンテナ・フレイト・ステーション)でほかのLCL貨物と混載後、CYに運ばれFCL同様本船に積み込まれます。
本船出港後、「モノ」は輸入国へ渡り輸出完了です。
「カミ」の流れ
次に、「カミ」すなわち「船積書類」の流れを解説します。
フォワーダーや通関業者が毎日のように目を通す「船積書類」。主な書類は次の通りです。
・インボイス
・B/L(船荷証券)
・保険証券
・パッキングリスト
・原産地証明書(EPAを適用したい場合など)
一般的に書類は輸出者が作成します。
商品名や金額、数値などの記載は間違いが起こりやすく、誤りや商品との相違があれば輸出できない可能性もあります。
海上輸送の場合は、航空輸送よりその判断が厳しい傾向にあるので注意しましょう。
そのため輸出側は、書類ミスのないようダブルチェックもしくはトリプルチェックをして万全の状態で申告するように心がけています。
輸出者からフォワーダー/通関業者へS/I送付
輸出者は、フォワーダーや通関業者へS/I(船積み依頼書)を送付します。
S/Iに記載されている内容は、依頼する作業内容や貨物の情報、船積書類、Booking情報(ETD, vessel, voyなど)に関するもの。輸出者によって書式はさまざまです。
船の出港後発行されるB/Lは、このS/Iに記載されている情報をベースとしています。
S/Iに基づく輸出申告
フォワーダー又は通関業者は、S/I(船積依頼書)に基づいて税関に輸出申告を行います。
現在は多くの輸出貨物が「NACCS(ナックス・輸出入港湾情報処理システム)」を利用しての申告が行われています。NACCSに申告情報を入力し税関へ送信することで申告は完了です。
申告後、次の3つの区分が出力されます。
・区分1:簡易審査扱い(申告をした後、すぐに輸出許可が下りる)
・区分2:書類審査扱い(書類の提出が必要)
・区分3:検査扱い(税関員が保税地域へ現物検査を行う)
ほとんどが区分1となりますが、税関の判断で区分2もしくは3となった場合は許可までに時間がかかるため、急ぎの貨物の場合は税関の指示に従い速やかに許可が下りるようにしましょう。
船会社へ船積書類提出
フォワーダーや通関業者は、船積書類(D/R、CLPなど)を作成し船会社へ提出します。
D/R(ドックレシート)は、船社のフォーマットに合わせてS/Iを元に作成されます。提出後、船会社はコンテナ貨物の受領証として一部を通関業者に返却します。
またCLP(Container Load Plan)は荷主が作成し、コンテナのどの位置に何が入っているのかを明確にします。
船会社発行B/Lをフォワーダー/通関業者へ提出
船会社はB/Lを発行し、フォワーダーと通関業者へ渡します。
インコタームズがCIPやCPT、DAPといった輸出者が海上運賃を負担する条件の場合は、船会社に運賃を先に支払うことでB/Lを受け取ることができます。しかし一般的にはフォワーダーが運賃を立替、後日請求書にて荷主へ請求されます。
このとき、B/LがS/Iの情報通りに発行されているかを再度確認します。
また今回はコンテナ船ですので、B/L下の欄にある『On Board Notation(船積証明)』に日付と船会社(あるいは代理店)の署名があることも忘れずに確認しましょう。
L/C決済の場合は、この『On Board Notation(船積証明)』があることで、『きちんと本船に載せられた状態で輸入港に向かった』という担保としての価値を持つことになりますので、意識して確認することが大切です。
船積書類、S/Aの送付
フォワーダーや通関業者は輸出許可書・B/Lなどの船積書類を輸出者へ渡します。
輸出者は輸入者へ船積書類とS/A(シッピングアドバイス)を送付して、船積みが完了したことを伝えます。S/Aはメールでスケジュールが決定した時と船が出港した時の2回連絡するだけでOKです。
輸入者はS/Aと書類を受け取り、引き取り準備を進めます。
荷為替手形を銀行に提示
輸出者は為替手形に船積書類を添えた「荷為替手形」を銀行に提示し、買取を依頼します。
荷為替手形とL/Cの内容が照合されれば、決済が行われます。そして商品が輸入者に届けば、無事輸出完了となります。
「カネ」の流れ
最後に、「カネ」すなわち「代金」について解説します。
今回はL/C決済での代金の流れを説明します。L/CとはLetter of Creditの略で、信用状のことを言います。
L/C決済の利点
L/C決済を行うことで輸出者は、商品を出荷すれば代金を受け取れるため、商品を送ったにもかかわらずお金がもらえない!という事態を避けることができます。
反対に輸入者は、商品を受け取る前に代金を支払う必要がなくなるので、支払い損になるリスクをなくせます。
L/C決済は、双方に大きなメリットのある決済方法なのです。
買取銀行と発行銀行
L/C決済の場合、船積みが完了してから代金が登場します。
輸出者が船積み後に買取銀行へ、B/Lなどの諸々の船積書類である「荷為替手形」の買取を依頼します。
ちなみに輸出者側の銀行は荷為替手形を買い取る銀行なので「買取銀行」、輸入者側の銀行はL/Cを発行する銀行なので「発行銀行」と呼びます。
この時に書類(荷為替手形)の内容がL/Cと一致すれば、決済されます。
発行銀行から買取銀行へ送金
その後、輸出側の銀行である買取銀行は、輸入者側の銀行へ荷為替手形(船積書類)を発送し、輸入側の銀行から代金の送金を受けます。
輸入者側の銀行は輸入者へ船積書類の到着通知と代金請求を行い、輸入者は発行銀行へ代金を支払います。
発行銀行から買取銀行へ代金が送金されて完了となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
輸出を行う上で、「モノ」「カミ」「カネ」は複雑に絡み合って、それぞれの役割を果たしていきます。
はじめのうちは、少しややこしく感じてしまうかもしれませんが、実務を何度か経験することで理解が深まり、輸出業務の楽しさを感じてくると思います。
今回の内容は以上になります!ありがとうございました!
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