どうもこんにちは、飯野です。
本日は、7月6日付の海事新聞から「FIATA、船社の地位乱用を批判。垂直統合より脱炭素投資推奨」についてお話していきたいと思います。
2022年7月7日イーノさんの物流ラジオ
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FIATA、船社批判
フォワーダーの国際団体FIATA(国際貨物輸送業者協会連合会、International Federation of Freight Forwarders Associations)は6月30日、「海運会社が市場での支配的な地位を乱用している」と指摘する意見表明書を公表しました。
この文書では、現在の市場環境と合致しない、独禁法適用除外などと併せ、船社が自由競争をゆがめ、最終消費者に悪影響を与えていると批判しています。
そして、IMO(国際海事機関)や各国規制当局などに、適切な政策措置を求めています。
また、過去2年で得られた巨額の利益を、ロジスティクス企業の買収など垂直統合ではなく、脱炭素化などに投資するべきとしました。
フォワーダーの分野への進出
FIATAは3大アライアンスが世界の海運市場の80%、東西基幹航路に限れば95%を支配していると分析しています。
サプライチェーンが混乱する中、海運会社がフォワーダーに対するサービスを削減・制限しようとしていると説明しています。
エアーはエアフォワーダーを通さないとタリフ運賃の適用となります。しかし、船はBCO(実荷主)と直接荷主と取引ができ、船会社は物流会社を買収して陸に上がってきているため、フォワーダーの仕事がなくなってきています。
脱炭素への投資を推奨
IMOは海運業界のGHG(温室効果ガス)排出量を2050年までに50%削減することを目指しています。
そのためのコストは2050年までに1・5兆ドル(約200兆円)を超えると推定され、そのうち87%が陸上インフラ・施設に投じられる見通しです。
一方、コンテナ船社は過去2年間で記録的な利益を上げており、イギリスの海事コンサルタントのドゥルーリーはコンテナ船社の2022年税引き前利益の総計は3000億ドル(約40兆円)に達すると予測しています。
FIATAは「船社は規制環境下で生み出されたこの利益を、ロジスティクス全体を支配するための合併や買収に投じている」と非難しているのです。
IMOや各国政府に対して、船社の投資を促すような脱炭素化計画を実施するように要請しました。
船社に対する独禁法
船社に対する独禁法適用除外についても、見直しを求めていく方針です。
更に、FIATAは特に船社が陸上輸送や付帯サービスに事業を拡大する中、独禁法適用除外の恩恵を受けないプレーヤーと、不公平な競争を行っていると指摘もしています。
独禁法適用除外の見直しと、より適切な規制対応を求めていく姿勢を示しています。
船会社の独禁法適応除外について
外航海運に係る独占禁止法適用除外が認められてきた背景として、「安定的な国際海上輸送の確保のための海事政策のあり方について」、次の4点が挙げられています。
1.世界単一市場で激しい国際競争が行われていること
2.サービス供給量の調整が容易ではなく供給過剰に陥りやすいこと
3.巨額投資が必要であり他社との連携の必要性が極めて高いこと
4.国際的な法制度の整合性の確保が求められること
これによって、船社は独禁法の適応除外でした。
制度の見直し
同制度は昭和24年に制定された後,平成11年,平成18年、平成22年の3度にわたって主な見直しが行われてきました。
平成22年度における見直しの検討の結果、同適用除外制度は維持し、平成27年度に再検討をし、場合によっては運賃同盟に係る独占禁止法適用除外制度を廃止の方向で見直しています。
今回FIATAが独禁法を持ち出してきたのは、船会社がコロナ禍で得た大きな収益で船以外の事業拡大を狙い、ロジスティクス全体を支配しようとしているという動きが大きくなってきたためです。
そのため、ここでちょっとストップをかけておかなければならない、という背景があったと思われます。
船会社の進出と中小フォワーダーの生き残り
国際物流とは歴史背景からみても、経済合理性の最たるものであり、もっとも効率的で、合理的でコストが追求されるものです。
船会社が物流で船以外の分野まで進出すると、フォワーダーの仕事が失われていく恐れがあります。
個人的には、今後は8割のロジスティクスの仕事は船会社や大手フォワーダーが取っていくようになると思います。中小は2割のニッチなところを攻めていくのではないでしょうか。
今後、船会社がどれだけ陸に上がってくるか、中小がどのように生き残っていくか。
何度もこのラジオでお伝えしていますが、国際輸送は変革期にきています。
マーケットの流れを読んで、正しい戦略を考えるというのが大切になってくると思います。
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