スエズ運河 座礁の問題から、コンテナ船の巨大化のリスクについて考える。

スエズ運河で座礁した船は過去10年に25回あります。しかし今回は20,000TEUクラスのコンテナ船で過去最大のサイズ、その為に運河が完全にブロッックされたことが問題になりました。

単に船が座礁しただけならここまで世界的に注目されるような問題にはならなかったと思います。しかし、絵面としても巨大なコンテナ船が運河を塞ぐというのはとてもインパクトのあるものでした。

今回はこの船の巨大化についてもう少し掘り下げて考えていきたいと思います。

なぜこんなにもコンテナ船は巨大なのか?

最初に質問ですが、なぜこんなに巨大なコンテナ船があるのでしょうか

答えは簡単で輸送効率を上げるためです。

小さな船で何度も運ぶよりも、大きな船で一回でドーンと輸送する方が燃料費、人件費、その他の諸経費も下がります

コンテナ船誕生時との比較

コンテナ船が世の中に初めて登場したのが1956年4月。その時は約58個のコンテナが輸送をされました。

そして今回スエズ運河で座礁した船は20,000TEUクラス。20フィートコンテナなら2万個が一度に運べるサイズです。

近年に造船されるコンテナ船は明らかに巨大化傾向にあります。

しかし、この船の巨大化のために、需要より供給の方が大きくなり 多くの船会社が統合したり、韓国系の大手の船会社は倒産までしてしまっています。

イーノさんイーノさん

詳しくはこちらの動画で解説をしております。


利便性より実利の資本主義

この資本主義の現在においては、やはりコストを出来るだけ安くしようとするのがビジネスでの基本です。中型の船を複数運行すると、やはりそれなりにコストとして反映されてきます。

分かりやすく例えるなら、ある町で。。

・小さなバスが1日3本運行するのか
・大きなバスが1日1本運行するのか

という感じでしょうか。

バス会社からしたら1本のバスで乗客を一回で沢山乗せる方が輸送効率は上がります。ですが一方で、町の住人からしたら1日3本バスが運行してくれる方が、自分の予定を立てやすくて便利なはずです

これと同じことが海運業界にも起こっています。船が巨大化する一方で、船の便数は減ってくるのです。

イーノさんイーノさん

荷主の立場からしたら、柔軟なスケジュールがあるほうが生産計画もフレキシブルになります。

コンテナ不足・スペース不足で肯定された巨大船

コロナが原因のコンテナ・スペース不足では、この巨大なコンテナ船のスペースが足りていない状況です。船会社は船のスペースを在庫できないし、出来る限り船をフルスペースで運行させたいもの。

現在では、このコンテナ不足・スペース不足で巨大なコンテナ船が満船になっている。これは儲かりますよね。

船の巨大化は止まらないのか?

今回のスエズ運河の事故が影響するかは分かりませんが、これ以上の大型化には少しブレーキになったかもしれません

とはいえ現在、世界最大級のコンテナ船では2.3万TEUを運べます。これが3万TEU運べる船が出てくると世界各地の港も改築をしないといけません。

スエズ運河や他の運河も改築が必要になったりするでしょう。

イーノさんイーノさん

だからすぐにドーンと更なる巨大化はないかな。多分。

中型船メインのサービス

上述したように、大型ではなく 少し小さなサイズのコンテナ船で、複数のスケジュールのサービスがある方が荷主にとっては助かるものです。

去年の11月以前では海上運賃は底値がずっと続いていたのですが、妥当で適切な海上運賃で中型船を頻繁に運行する!というポリシーで経営してくれる船社があってもよいのかなと思います

イーノさんイーノさん

こうなると必要なのは荷主の理解かな。

少し高くてもよいから安定スケジュールのサービスを理解する、運賃を受け入れてくれる。でも、私たち海運業で海上運賃の見積もりを出した時に「他社の方が10ドル安い!」と普通に言われます。

このような荷主さんばっかりだと、この構想は実現しないでしょう。

イーノさんイーノさん

船社からしても競争に勝てないかわからず リスクなので、夢物語か。。

まとめ

コンテナ船の巨大化はコロナ前までは赤字の原因と捉えられていましたが、コロナ後のコンテナ・スペース不足で一気に肯定されたような気がします。

しかし、今回のスエズ運河の座礁の問題が発生して「巨大すぎるコンテナ船は安全運行リスクがある!となって、中型船にシフトしていくか?」というと資本主義の世の中では、そうはいかないでしょう。

荷主からしたら船の大きさは全く関係なく、安定的でフレキシブルなスケジュールが求められるのですが、船のスペースを在庫することができない船会社にとっては利益、リスクを考えると単なる私の妄想に終わる話なのかなと書いていて思いました。