大手荷主向けの海上運賃、長期レートがスポット運賃なみの高値!荷主はスペース確保優先。

どうもこんにちは、飯野です。

今日は海事新聞のニュースから、「日系大手荷主向けのコンテナ運賃交渉、年契約がスポット運賃の水準に」についてお話ししていきたいと思います。

2022年3月14日イーノさんの物流ラジオ

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2022年度の運賃交渉

コンテナ船社とBCO(日系大手荷主)の2022年度の運賃交渉は終盤戦に突入しています。

スペースが逼迫しているため、大手荷主は軒並みスペース確保を最優先しています。

今回の交渉は「運賃そのものが問題にならない初の運賃交渉となった」と船社関係者は伝えています。

長期レートの高騰

成約した契約運賃は、2021年のスポット(短期)運賃並みという記録的な高値が続出しているようです。

通常、長期契約はスポット運賃よりも安く設定されます。2022年の長期契約の運賃が、去年のスポット運賃並に高くなったというのがポイントです。

2022年の交渉の焦点

主要船会社の今年の供給スペースはどこも前年並みですが、荷主側は出荷計画の増加を見込んでいます。圧倒的に需要の方が高く、交渉内容は極端なほど売り手優位の交渉となったと報じられています。

運賃よりもスペース確保優先

今回の交渉で焦点になったのは、供給スペースの確保であり、「荷主から聞かれるのはスペースのことばかり。運賃については全く話題にもならなかった」(船社の営業担当)。

船社側が1次段階で提示した金額を丸のみするところが少なくなかったとのことです。

更に安定した輸送スペースを確保するため、2年間など複数年契約を結ぶ事例も見られました。複数年契約は荷主にとってはリスクですが、船会社にとっては安定した利益がみこめるから魅力的です。

もし2023年に運賃が急落したら、複数年契約した荷主は損をします。船会社はスペース供給の提供を確約し、複数年契約を積極的に受けたようです。

長期レートの価格

日本・アジア発北米西岸向けの長期運賃は、2021年の運賃交渉での金額はUSD3,000-4,000/40’程度でした。

しかし、今年の1月時点では、40フィートコンテナ当たり1万ドル前後が一つの指標と言われており、既に決まったBCO向けでは、この指標を上回る金額が多く、去年の倍以上に値上がりしました。

日本発がアジア発より高値に

そして記事の最後に、日本発北米向けのスポット運賃で中国発を上回ったと報じられています。

アジア発に比べて、日本発の値段が高くなる傾向が出てきています。従来、日本発がアジア発に比べて一般的に割安といわれてきましたが、昨年末から逆転しました。

現在、日本直航便の相次ぐ欠便があり、儲からないため、日本への寄港を避ける傾向が見られます。

日本発の条件が悪くなっていることで、アジア発に比べて値段を高くしないとスペースを確保できないようです。

スポット運賃は

今回の記事で気になるのは、今年のスポット運賃です。

今年の長期レートが去年のスポット運賃と同じくらいとなり、その場合、スポット運賃は更に高くなるのが一般的な流れです。

アメリカ政府の船会社への対応

しかし、バイデン大統領が海運会社を叩いています。北米はかなりのインフレであり、3月1日のアメリカの一般教書演説で、バイデン大統領は下記のように批判しました。

「米国内外に物資を運ぶ海運会社の状況を見てほしい。コロナ禍の間、外資系海運会社が1,000%もの値上げを行い、記録的な利益を上げている」

その上で、「米国の企業と消費者に過大な請求をしている企業の取り締まりを発表する」とバイデン大統領が述べると、議場では大きな拍手が沸き起こったようです。

それに対して世界海運協議会(WSC)は翌日の3月2日、「コンテナ船業界は十分に競争している環境にある。そして、過去に例のない輸送需要に対応している業界に対し、根拠のない批判が行われたのは非常に残念」との声明を発表しました。

国内外ともに運賃動向注目

冒頭に話をしたのは日本の荷主の話ですが、海外の荷主も同じような状況のようです。

日本のBCO向け長期レートが安すぎたため、そのギャップに注目してしまいがちですが、BCO向けの長期レートが昨年より高くなるでしょう。

これ以上のスポット運賃を上げない為に、アメリカのパワープレーで、何らかの規制が入るかもしれません。

どうなるかは分かりませんが、日本の船会社は長期レートが倍以上で売れることが決まっていますので、2022年の収益が去年より高くなることは確定です。

現場の立場として、今後の運賃動向にも注視していきます。