最高裁でフォワーダーが保険会社に勝訴!コンテナ貨物の水濡れダメージ補償、B/L約款の免責は有効

どうもこんにちは、飯野です。

6月14日付の海事新聞から、「コンテナ貨物での水濡れダメージの補償、BL約款の免責は有効。最高裁でFW勝訴」についてお話していきたいと思います。

2022年6月15日イーノさんの物流ラジオ

イーノさんイーノさん

チャンネル登録よろしくお願いします!

裁判の内容

輸送中の海上コンテナで水損した貨物の補償に際し、保険会社がフォワーダーを訴える裁判がありました。

最高裁は5月に保険会社側の上告受理申し立てを退け、フォワーダーの勝訴が確定しました。

貨物の詳細

対象となった貨物は、タイのバンコクから横浜まで輸送した20フィートコンテナで、総額で数百万円相当の自動車関連品貨物です。

横浜について、コンテナを開扉時に水濡れダメージが判明しました。

この貨物は荷主責任でバン詰めするシッパーズパックコンテナでした。

荷主責任の積み込み貨物

コンテナに貨物を積み込むことをバン詰めと呼びますが、FCLの場合は大体シッパーが自分で積み込みます。

LCLの場合はキャリアーズパックといって、船会社やフォワーダーがバン詰めします。

今回は荷主がバン詰めする、シッパーズパックというのがポイントです。

裁判の争点

貨物に水濡れのダメージがあったため、荷主は保険を使ってその分の補償を受け、保険会社はフォワーダーに補償費用の支払いを求めました。

保険会社は保険金を支払うと、支払った額を、問題を起こした責任のある会社に請求し、払わなければ訴えます。

僕のフォワーダーの立場からしたら、ちょっと驚きです。これで訴えられるの?と率直に思いました。

裁判で争点となったのは、下記3点です

・シッパーズパックコンテナ
・BLの約款の免責事項
・国際条約であるヘーグルール(国際海上物品運送法)

B/Lの約款と国際条約

ちなみに、B/Lは国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)の書式のものを使用し、B/Lの約款というのは輸送上の約束事のことです。

貨物ダメージが発生した場合、誰がどこまで責任を追うか等が書かれています。

ヘーグルールとは、海上運送契約における運送人の、権利・義務を詳細に規定した国際条約です。

事故が生じた場合の運送人の責任について規定されており、運送人の責任を追及する場合の根拠ともなる条約です。

ヘーグルールの他にも、ハンブルグルールやロッテルダムルールがありますが、日本はヘーグルールを批准しています。

ヘーグルルールの解釈

裁判は大手の損害保険会社が原告で、大阪のフォワーダーさんを訴えていました。

ポイントはヘーグルールの解釈です。

保険会社側は「海上輸送中の貨物破損に対する運送人の免責は、同法で禁じられている」と主張しました。

海上輸送中で貨物ダメージがあったら、免責にならず、運送人はちゃんと責任をとりましょう、ということです。

そしてJIFFA書式のB/Lの約款には、シッパーズパックコンテナでの運送人の免責規定が記載されていました。

更にヘーグルールでは、「貨物の受領から引き渡しまでの間の免責約款を禁止する」一方で、船積み前や荷揚げ後の特約を認めています。

つまり、貨物の受領から引渡しまでの間は、運送人は貨物ダメージの責任をとりましょう、としている一方で、ターミナルでの船積み前や荷上げ後には、特約があり、ここは免責となっています。

双方の主張

裁判ではバンニング時に貨物の水濡れはなかったこと、バンコク、横浜両港でヤード保管中に雨があったことは認定されていました。

裁判所は水濡れダメージは契約上の運送区間で生じたとした一方、発生そのものは船積み前または船積み後に当たるとして、免責条項は有効だと判断したのです。

保険会社側は、コンテナ輸送はターミナルでのコンテナ受領時点で船積み作業が始まり、本船から荷揚げ後のターミナル引き渡しまでが荷揚げ作業に当たると主張していました。

そして、これはヘーグルールの免責約款禁止に触れると反論をしましたが、裁判所はこれを退けました。

つまり、ターミナルで発生した問題でのダメージは免責であり、フォワーダーは責任を負わなくても良いと裁判所は判断しました。

更に保険会社側は、他のハンブルクルールやロッテルダムルールなど、ヘーグルールより少し厳しい条約も取り上げて主張しましたが、日本はヘーグルールを批准しているとし、いずれも認められませんでした。

今後のモデルケース

とはいえ、裁判所は、直ちに国際海上物品運送法での船積みや荷揚げの内容の解釈が定まるとは言えないとしています。

今回の判決は運送人となるフォワーダーに有力な対抗手段を与えたことになり、判例は今後同様の事例でモデルケースとなりそうです。

貨物ダメージと補償については、法律が絡み、詳しくは専門家の方に聞くのが良いと思います。

自分で色々調べてみましたが、凄く勉強になったニュースでしたので、お話いたしました。